放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「薬物」について。
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ここ数週間、飲み屋で薬物の話になることが多い。そこで興味深かった話。知り合いのプロデューサーAさんのお子さんは中学生で、その学校では、薬物がいかに怖いものかを教えるために映像を見せるのだが、そのVTRがとてもエグい中身なのだという。薬物をやった末にどんなふうになってしまうかが映し出されているようだ。その映像を子供たちに見せるのをやめたほうがいいのではないか?と言っている保護者がいて、いろいろな意見が巻き起こっているのだとか。Aさんは「見せたほうがいい派」。Aさん曰く、都内では、ちょっとセレブな家の中学生に薬物を売ろうとする人たちがいるのだとか。だからこそ、トラウマになるくらいの恐怖を与えるべきだという。うちの息子がもしその学校に通っていたら、僕も同じ意見だ。
数年前、ダルクの人たちに取材した話を僕がまとめて構成する仕事をした。最近、何かと取り上げられることも多いが、ダルクとは「薬物依存症」という病気から回復して、社会復帰を目指すための民間のリハビリ施設のことですね。薬物依存は病気であると捉える。そこで語られていたのは、薬物から抜け出せなかった人たちのリアルな話の数々。
印象的だったのは、あるトラック運転手さんの話。昔、薬物をやっていたときは、ビジネスホテルでよくやっていたのだとか。薬物を断って生活していても、あるとき、突然、薬物をやっていたときの記憶が蘇る。この人の場合はビジネスホテル。今でも仕事でビジネスホテルに行くと、ビジネスホテル特有のシャンプーのにおいとか、ポットでお湯を沸かすときの音とか、ベッドの硬さとか、シーツの感触とかがきっかけで、昔、ビジネスホテルで薬物をやっていた記憶が蘇り、やりたくなってしまうらしい。そんなときに、ダルクの仲間に連絡して、やりたくなってしまった気持ちを告げて、朝まで電話で話し相手になってもらうのだとか。そのとき取材した人たちが共通して話していたこと。「二度とやりません」という言葉と意思は、薬物に染まった体には通用しないということだ。