デリシャス/ジュジュ
デリシャス/ジュジュ写真・図版(1枚目)| 『デリシャス/ジュジュ』
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J-POPの人気女性歌手が初めて挑戦したジャズ・アルバム
Delicious / JUJU

 12月8日付朝日新聞朝刊の全面広告はインパクト大だった。CDの10倍に拡大されたアルバム・カヴァーは、スヌーピーら漫画ピーナッツのキャラクターがJUJUを取り囲んでいて、楽しそうな雰囲気。

 すでに多くのメディアが報じているように、J-POPの人気女性歌手が初めて挑戦したジャズ・アルバムである。ジャズ以外のジャンルで活躍するヴォーカリストによる、同種の作品はこれまでに本欄でもいくつか紹介してきた。しかし本作の成り立ちはいささかそれらとは異なる。何より歌手名がウェイン・ショーターの64年同名作(Blue Note)に由来すると知れば、彼女を知らなかったジャズ・ファンも興味を持つに違いない。

 12歳でジャズ・シンガーを志して18歳で単身ニューヨークへ渡るも、現実と直面したため、夢を凍結。同地にとどまりながら音楽活動を続け、日本でのデビューに漕ぎ着けた経歴がある。昨年リリースの『リクエスト』はMy Little Lover、MISIA等、J-POPのカヴァー集で、近年高セールスを記録するこのジャンルの新たなヒット作となった。

 本人のイメージよりは早いタイミングながら、このジャズ・アルバムを制作するにあたって、周到な準備がなされた。サウンド・プロデューサー&ピアニストを島健に依頼。三好“3吉”功郎(g)、納浩一、加瀬達(b)、渡嘉敷祐一(ds)、斉藤ノブ(per)のリズム・セクション、そして村田陽一(tb)、近藤和彦(as)、小池修、竹野昌邦(ts)、山本拓夫(ts,bs)のホーンズも含めて全員が本邦ジャズ界で活躍するトップ・プレイヤーが勢揃い。さらに著名ゲストをフューチャーする贅沢なセッティングだ。海外の一流どころを起用する選択肢もあったと思うが、そうしなかったことは邦人ジャズ・ミュージシャンの質の高さをアピールする意図があったようで嬉しくなる。

 プログラムは2曲のオリジナルの1つである#1でスタート。ビッグバンド+金原千恵子ストリングスに、谷口英治(cl)が加わった編成で、JUJUはコケティッシュな表情を交えて、ジャズへの愛情を表明。ヘレン・メリルで日本人にはお馴染みの#2を敢えて取り上げた勇気は、説得力のある歌唱によって共感を生む。ボサ&4ビートにも自然に対応する#3、囁くようなヴォイスとTOKU(flh)が絡む#4、渡辺香津美が終始ヴォーカルに寄り添う#5、ジョージ・ベンソン・ヴァージョンを想起させる土岐英史(as)&麻子(vo)父娘との共演曲#8、アンニュイな歌唱を菊地成孔が助演する#11。JUJUの特に思い入れがある#12は、ピアノとのデュオで持てるスキルをすべて注入してオリジナル・ヴァージョンに仕立てた。邦人ジャズ歌手界に大きな一石を投じる作品である。

【収録曲一覧】
1. A Woman Needs Jazz
2. You’d Be So Nice To Come Home To
3. Night And Day
4. Candy
5. Cry Me A River
6. Girl Talk
7. Lullaby Of Birdland
8. Moody’s Mood For Love
9. Quizas, Quizas, Quizas
10. Calling You
11. Ev’ry Time We Say Goodbye
12. Lush Life
13. みずいろの影

ジュジュ:JUJU(vo)
島健:Ken Shima(p,arr,cond)
菊地成孔:Naruyoshi Kikuchi(ts)
土岐英史:Hidefumi Toki(as)
渡辺香津美:Kazumi Watanabe(g)

2011年作品

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