――けがをしてからいろんな練習をしてきたというが、体力作りも含め、どのような練習をしたのか。リンクの上での練習を再開した時期、プログラムを滑った時期を教えてほしい。

羽生:ちょっとカレンダーを見なければ思い出せないところがあって、明確ではないんですが、(4回転)ループまで飛べるようになったのが、いつかな……2週間、3週間前ぐらい……かな……。3週間前ぐらいにやっとループが、50本に1本跳べるようになったぐらい、でした。

 それから、いろんな練習……いろんな練習ってどういうふうに表現したらいいのかちょっとわからないのですが、とにかく、一つひとつの完成度を上げる練習から始め、また、右足首の強度をあげつつ、強度をあげるのと同時に、ループに耐えうる筋力もつけるように努力してきました。
 やはり、オリンピックの時と違い、今回はループを飛ばなくてはいけないという使命感がものすごく強くあるので。そうするうちに、フリー、ショートに対しての体力もついてきたかなという感じです。

――平昌五輪が終わり、新しいシーズンを迎える中、なかなか心に火が灯らない中でやってきた前半で、ようやく火がついてきたというところでけががあったように見えた。この世界選手権に、心の炎はどのような状態で向かっているか。

羽生:えっと、正直に言ってしまうと、(グランプリシーズ)ロシア大会でけっこう燃やし尽くせたって思っています。もちろん、ロシアの時は、フリーを滑るのも大きな決断だったと思っていますが、あそこで滑り切れたからこそ、自分の中でくすぶり続けてたものが、ちょっと開放されたような感覚もある。ただ、試合に出られない、試合を見ているだけの時期はものすごくつらい。油はあるし、火もあるんだけど、なんか、ちっちゃい部屋の中でずっと燃えてるような感じでした。

 やっとこうやって試合に向けていろいろ始動し始めて、実際いま、試合の会場にきて、本当に大きな箱の中で好き勝手暴れまわる炎になれてると思っている。本当に気持ち良くスケート滑りたいなと思っています。

 もちろん、勝つことは一番大切なものだと思います。(勝ちたいという気持ちは)競技者として一番持ってなきゃいけないものだと思っていますが、ただ、相手に勝つだけじゃなくて自分に勝った上で、この今すごく煮えたぎってる勝ちたいっていう欲求に対してすごく素直になって、勝ちを取りたいなと思ってます。

(本誌・太田サトル、大崎百紀)

※週刊朝日オンライン限定記事

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