たとえ、現在停止している原発をすべて再稼働させたとしても、20基程度にしかならないはずである。

 ということは、原発を10基近く新設するつもりなのか。

 東芝、三菱重工、日立の3社は、国内で新設の見込みがない、とあきらめて海外での建設を計画していたのである。

 実は自民党の少なくない幹部たちに、原発新設の可能性はあるのか、と問うた。誰もが、そんな可能性はない、と答えた。

 それなのに、なぜ、30年に30基稼働となるのか。いってみれば、無責任な計画なのである。

 それに、現在進められている、事故を起こした東電原発の廃炉作業が、実は大問題なのである。

 東電は廃炉工程を進めて、溶融核燃料(デブリ)を取り出すことにしている。だが、取り出して、どうしようとしているのか。

 東電はデブリを取り出して、福島から撤去する、と地元の人々に約束しているのである。

 だが、東電はデブリを取り出して、一体どこに持っていくつもりなのか。危険極まりないデブリなど、受け入れる地域は、少なくとも国内にはまったくないはずである。

 そんなことは、東電は百もわかっているはずなのだが。

週刊朝日  2019年3月29日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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