福祉やボランティアは、自らを犠牲にする行為なんです。被災地を目の当たりにしたら、押しつぶされそうな気持ちになります。でもそれは隠し、励まさなければならない。明るく振る舞わないといけない。感謝の言葉も求めちゃいけない。見返りを求めたら福祉は終わりですから。
何がそこまで駆り立てるのか……。わからない。困っている人を放っておけなかった母親の影響はあるとは思う。でも、親に何か言われたとしても必ず子どもが動くとも限らないでしょう。
宮中晩さん会に伍代(妻の伍代夏子)と2人で招かれたときのことです。天皇、皇后両陛下が入り口でベトナムの要人ら招待客を出迎えてくださっていた。
皇后さまは私を見つけると3歩ぐらい前に出られ、「筋金入りのお方ね」とおっしゃったんです。そのお言葉に、まるで時代劇だなと驚きました。そして、私の福祉活動を見てくださっているんだなと、深く感じいりました。
――今年で芸能活動55年、福祉活動60年。振り返って何を思うのだろう。
ずっと後悔をしない人生を送ろうと思ってきました。山あり谷ありの人生だけど、振り返ったときに出発点が見えるような人生でありたい。
「生きるということ むずかしき しぐれかな」
小説家の川口松太郎先生が、私に詠んでくれた句です。生きていくことが大変なことを知っている、という意味です。もう一度、人生を最初からやり直すとしたら、私はやはりハードな道を選んで歩むのではないかと思います。
(聞き手/石原壮一郎)
※週刊朝日 2019年3月8日号