ステージ別の5年生存率を見ると、どの部位のがんでもステージ4で一定の生存率があることがわかります。

 予後がきびしいといわれている食道がんでは12.4%です。

「これは2007年~09年の症例から出たデータですので、現在はもっと高いでしょう。ステージ4=死のふちではないことがわかっていただけると思います」(東京女子医科大学病院がんセンター長の林和彦医師)

 生存率が向上している大きな背景に薬物療法の進歩があります。

「ステージ4で遠隔転移がある場合は、薬物療法が中心となりますが、治療によって転移病変のがんが大きく縮小したり、消失したりした場合、手術によってがんを取りきれる可能性が高まります。こうした手術をコンバージョン手術といいます。手術ができる状態になればステージは4から3に下がることが多く、これをダウンステージといいます」(林医師)

介護保険制度と末期がん

 大腸がんのステージ4はコンバージョン手術によって多くの患者が助かるようになったといいます。

「治療の進歩にともなって、ステージの診断法が変わったものもあります。例えば膵臓がんは、遠隔転移やリンパ節転移がなくても周囲の血管やリンパ管に浸潤しているものはステージ4とされ、手術の適応とはなりませんでした。しかし、放射線や薬物療法により、腫瘍が小さくなると手術ができることがわかってきたため、新しいガイドラインではこうした段階のものはステージ3に変更されています」(林医師)

 こうした背景から医療現場ではもう「末期がん」という言葉は使われなくなっています。ただし、介護保険制度の手続きにおいては、使用されることがあります。

 実は40歳以上65歳未満の人ががんで介護保険制度を使う場合、対象は「がんの末期にあたる人」と定められているのです。

 ここでいうがんの末期の定義は、「治癒を目指した治療に反応せず、進行性かつ治癒困難または治癒が不可能な状態で、おおむね余命が6カ月程度」とされ、診断基準にしたがって、医師が判断します。

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「がんの末期」は便宜的な表現にすぎない