女性ホルモンには舌を支える筋肉を緊張させる作用があり、これが気道を確保しています。更年期から女性ホルモンの分泌量が減少していくことで、気道を確保できなくなっていき、いびきをかきやすくなると考えられています。

 いびきの治療にはいくつか方法がありますが、代表的なものがマウスピースです。そして、このマウスピースは歯科で作ります。

■いびきをかかなくなると熟睡できる

 マウスピースは「スリープスプリント」と呼ばれ、上顎と下顎のマウスピースがつながっており、噛んだときに真ん中にすき間ができるようになっているタイプが中心です。

 特に重要なのが下顎のマウスピースで、噛んだときに下顎が前に出るように噛み合わせを作ります。寝ているときにこの状態で下顎が固定されることで、顎が喉のほうに落ちないようにして、気道が狭くなることを防ぐのです。

 マウスピースの効果はつけて比較的すぐに実感できます。気道が開き、いびきをかかなくなると熟睡できるので、「目覚めがすっきりする」ためです。「体調が以前よりよくなった」と喜ぶ方も多いですね。

 気道が完全に閉塞(へいそく)してしまう、睡眠時無呼吸症候群の方であればなおさらだと思います。「使うことを忘れてしまうと寝られない。旅行に行くときも忘れないようにしています」という声もよく聞きます。

 健康のためにも、いびきの治療を検討して損はないでしょう。

 なお、マウスピースを作りたい場合は最初にいびき治療を行っている医療機関を受診することをおすすめしています。そこで医師にいびきの原因を探ってもらい、必要に応じて検査を受けます。その後、紹介状を書いてもらい、歯科に来ていただくという流れです。もちろん、先に歯科に来ていただいても構いません。その場合、必要に応じて専門医を紹介しています。

 なお、睡眠時無呼吸症候群が原因のいびきに対しては、健康保険でマウスピースを作ることができます。

 最後に、詰め物やかぶせものなどと同じように、マウスピースにも材料や作り方などにより、グレードがあります。費用やメリット、デメリットなどをよく主治医に聞いたうえで、どれにするかを選ぶといいでしょう。

◯若林健史(わかばやし・けんじ)歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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