「いびきがひどすぎるから、なんとかして」「寝室を別にしたい」。家族からこのように言われ、悩んでいる人は少なくないのではないでしょうか。このいびき、歯科で治療ができるといいます。どんな方法なのか、果たして効果はあるのか、テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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50代のある女性患者さんは歯の治療中に、デンタルチェアで寝てしまい、軽いいびきをかいていました。少ししてご自身のいびきの音で目が覚めたのですが、
「私、いま、いびきをかいていましたよね? 今まで主人にもいびきをかいていると一度も言われたことがないので、信じられません」
と困惑されていました。帰宅後、その患者さんはご主人に早速、確認したそうです。その結果は、
「実は……気づいていたけれど、ずっと言えなかった」
結婚から30年、夫からの「まさか」の告白でした。
いびきは上気道がなんらかの原因で狭くなり、呼吸をするときにこすれて発生する、振動音です。飲酒や風邪、鼻炎などで気道が狭くなって起こるいびきなど、一時的なものもありますが、慢性的に起こるものが問題になります。
慢性的ないびきの原因にはアデノイドで知られる咽頭扁桃(いんとうへんとう)の腫れ、のどちんこと呼ばれる口蓋垂(こうがいすい)が大きい場合、副鼻腔炎(ふくびくうえん)や鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)(鼻の骨が曲がった状態)、睡眠時無呼吸症候群など病気によるものがあります。さらに顎が小さい、肥満、女性ホルモンの減少など体の特性から起こるものも。
もうおわかりかと思いますが、実はいびきは子どもから大人まで、男女を問わず、誰にでも起こりうる症状なのです。実際、最近では冒頭のような女性の患者さんも増えてきました。男性の場合は睡眠時無呼吸症候群の人が多いですが、女性の場合は女性ホルモンの減少が関与しているケースが多いといわれています。