【梯子地蔵】京都市西京区嵐山薬師下町48 薬師禅寺内大小・新旧さまざまな梯子が無数に納められた奇妙な風景が見られるのは、京都・松尾山の麓にある薬師禅寺本堂の脇の小さな地蔵尊。「おねしょ封じ」として信仰されてきた。だがなぜ梯子? おねしょで苦しんだ小坊主を祀った地蔵がもともと崖の上にあり、参拝するには梯子が必要だったからだという。梯子の段数は奉納者の年齢だ(写真/小嶋独観)
【梯子地蔵】
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京都市西京区嵐山薬師下町48 薬師禅寺内

【写真特集】生首代わりの帽子、大量のキュピーなど…奇妙な奉納の世界

大小・新旧さまざまな梯子が無数に納められた奇妙な風景が見られるのは、京都・松尾山の麓にある薬師禅寺本堂の脇の小さな地蔵尊。「おねしょ封じ」として信仰されてきた。だがなぜ梯子? おねしょで苦しんだ小坊主を祀った地蔵がもともと崖の上にあり、参拝するには梯子が必要だったからだという。梯子の段数は奉納者の年齢だ(写真/小嶋独観)

「なんでこんなものが?」と首をかしげたくなる奉納物が日本全国の神社仏閣には多々ある。はたして何を祈願したのか──。

「寺社が布教する“上からの宗教”とは違う、庶民が神仏に伝えたい心からのメッセージ。それが奉納物です」

 20年近くも全国の寺社を巡り、「これは何?」「いったい何を祈願したの?」と問いたくなる奇妙な奉納物を取材して『奉納百景』という本にまとめた小嶋独観さんは、奉納物の魅力を「民衆側から発せられる“下からの宗教”の姿が見られるところ」と語る。

 小嶋さんによると、奉納のスタイルも時代とともに変化しているという。

 下記で紹介しているキューピー人形(栃尾又薬師堂)以外にも、涎掛けと帽子ではなくロリータファッションの服を着た水子地蔵(福岡県・文殊院)、だんご3兄弟の姿をした石仏(埼玉県・定福院)など、保守派が眉をしかめそうな奉納物は日本中にある。

「庶民の側の思いが直接反映されるものなので、時代によって変化していくのは自然だと思う」(小嶋さん)

 奉納は時代を映す鏡だとしたら、奇妙なのも当然か。

<いったい何を祈願した? 奇妙な奉納物に込められた思い>

■栃尾又薬師堂/新潟県魚沼市栃尾又温泉

子宝の湯として知られる栃尾又温泉。一軒宿「自在館」の隣に樹齢400年の「子持杉」「夫婦欅(けやき)」と呼ばれる2本の木が並び、その脇に立つ薬師堂に奉納されているのが、子宝を願う多数のキューピー人形だ。かつては千羽鶴や人形が奉納されたが、現在は、旅館で販売されている絵馬付きのキューピー人形(864円)が中心になった。

■梯子地蔵/京都市西京区嵐山薬師下町48 薬師禅寺内

大小・新旧さまざまな梯子が無数に納められた奇妙な風景が見られるのは、京都・松尾山の麓にある薬師禅寺本堂の脇の小さな地蔵尊。「おねしょ封じ」として信仰されてきた。だがなぜ梯子? おねしょで苦しんだ小坊主を祀った地蔵がもともと崖の上にあり、参拝するには梯子が必要だったからだという。梯子の段数は奉納者の年齢だ。

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