イラスト/坂本康子 (週刊朝日 2019年2月8日号より)
イラスト/坂本康子 (週刊朝日 2019年2月8日号より)
 (週刊朝日 2019年2月8日号より)
 (週刊朝日 2019年2月8日号より)

 性欲の格差は男女間でも、世代間でもあって当然のことである。しかし自分に性欲がないからといって「もう年だから」「面倒くさい」を連発するのは考え物だ。欲求を満たすためではなく、信頼関係を維持するための「長寿社会の性のあり方」を考える。

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 長く夫婦を続けていると“相手の気持ち”を思いやることをついつい後回しにしてしまうこともある。相手が、もはや一緒の空間にいて当たり前の、空気のような存在になっているからかもしれない。

「でも慣れ親しんだ夫婦こそ、自分たちが初めて出会ったときのことを思い起こすことも大切です」(日本家族計画協会理事長で産婦人科医の北村邦夫さん)

 北村さんが教えてくれたのはイギリスの動物学者、デズモンド・モリスの提唱する「ふれあいの12段階」に沿って、自分たちの過去を振り返ってみることだ。

「デズモンド・モリスは人間同士が親密になっていくには12段階のプロセスがあると言います。まず『目から身体』(つまり相手を見る)、そして『目から目』(見つめ合う)、『声から声』(話す)、『手から手』(手をつなぐ)、『腕から肩』(肩を組む)、『腕から腰』(腰に腕を回す)、『口から口』(キス)、『手から頭』(頭をなでる)、そして『手から身体』『口から胸』『手から性器』へと進み、最後に『性交』にいたる。どんなカップルでもなんとなくそんな記憶はあるでしょう?」

 相手に対してもはや性欲が持てない。相手の欲求が鬱陶しくてたまらない。そんなとき、

「根本的な解決にはならないかもしれませんが“心の処方箋”みたいなものとして、この12段階をちょっと思い出してほしいんです。自分はなぜ相手をパートナーとして選んだのか。時々はスタート地点に立ち返ることも、長い人生を共に生きていく上では必要なことだと思いますよ」

 高齢になってからも性欲があることは、決して否定的に捉えることではないと、坂爪真吾さんは言う。坂爪さんは重度身体障害者男性の性的介助を行っている一般社団法人ホワイトハンズの代表理事として、現代の性問題の解決に取り組んでいる。

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