歯周病で失われたあごの骨(歯槽骨)を再生する治療が話題です。骨を再生できれば歯が安定し、歯周病の進行も抑えることができます。どんな治療法があり、どのくらい効果があるのでしょうか。歯科医師による技術力の差はあるのでしょうか? テレビなどでおなじみの歯周病専門医、若林健史歯科医師に疑問をぶつけてみました。
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歯周病の基本治療(プラークや歯石を取り除く)をすれば病気の進行はストップします。しかし、歯周病により失われてしまった骨は完全には元に戻りません。このような場合にすすめられるのが歯周再生治療です。
現在、主に行われている治療は「GTR法」「エムドゲイン法」と「リグロス(一般名・トラフェルミン)による治療」の三つです。なお、GTR法とリグロスによる治療は健康保険が使えます。
治療の手順を詳しく説明しましょう――。
まず、歯周外科治療である「フラップ手術」で歯ぐきを切って骨から剥離し、歯根と骨を露出させ、歯根にこびりついたプラークや歯石を取り除きます。
フラップ手術をした後は歯周病の原因が取り除かれるので、何もしなくても歯ぐきや骨がある程度、再生してきます。しかし、骨よりも歯ぐきの再生スピードが速いため、自然に再生を待つと歯ぐきのほうが骨のすき間を埋めてしまう(つまり骨が再生できない)という現象が起こります。
そこで、「GTR法」では人工膜(GTR膜)で壁を作り、歯ぐきが入り込めないようにして骨の再生を促します。
「エムドゲイン法」で使うエムドゲインジェルとリグロスはいずれも骨の再生材料を主成分とした薬です。エムドゲインジェルは歯が生えてくるときに重要な役割をするたんぱく質を豚の歯胚(歯や歯周組織のもととなる細胞の集まり)から精製した、どろりとしたジェル状の薬です。
リグロスは日本で開発された薬(液体)で、人間由来のたんぱく質を人工的に生産した「FGF-2(塩基性線維芽細胞増殖因子)」が主成分です。FGF-2はからだの中で傷を治すときなどに放出される成長因子で、当初は皮膚の床ずれなど治りにくい傷の治療薬として開発されていましたが、その後、骨の再生にも効果があることがわかり、再生治療の薬として研究が進められてきました(2016年12月から健康保険の適用となっています)。