身近な人の死後は、葬儀や相続で親族らとのやりとりに追われる。その一方で、役所に出向いて書き慣れない書類を提出するなど煩雑な手続きに追われる日々になる。手続きの流れを知っておけば、万一の際も慌てずに済むはずだ。
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『身近な人が元気なうちに話しておきたい お金のこと 介護のこと』(東洋経済新報社)著者で、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(FP)の井戸美枝さんが、母の年金受給を止めようと年金事務所に行った際、“まさか”の出来事に見舞われたという。
「母は独身時代に銀行に勤めていました。その当時の(年金記録ミスによる)『宙に浮いた年金』が見つかったのです。加入記録に間違いがなかったかを確認するため、年金記録照会申出書に必要事項を記入して提出しました。何度も年金事務所へ通うことになりました」(井戸さん)
さまざまな死後の手続きを進めるなかで、住民票、戸籍謄本、印鑑証明書などの書類は何通も必要になる。たびたび役場に足を運ぶと大変なうえ、1枚数百円のお金がかかる。どの書類が何枚必要か、コピーでも代用できるかなどを確認しておくとよい。
大慌ての必要はないが忘れないようにしたいのは、公共料金や各種サービスの解約や名義変更。電気、ガス、水道、NHK受信料など、契約先や連絡先をあらかじめ書きとめておくとスムーズだ。同居の家族が引き続きサービスを受け続ける場合、名義人や支払い方法の変更を。新聞などの定期購読料、月謝が引き落とされるフィットネスクラブ、サークルなども連絡を怠らないようにしたい。
死後の手続きに詳しいFPの畠中雅子さんは「死後は口座が凍結されるため、年会費を払うクレジットカードやネットのプロバイダーなども故人名義のままにしておくと、料金を引き落とせなくなります」と話す。
そうこうしているうち、あっという間に四十九日法要が来る。お墓がなければ、どこに納骨するかを決めなければならない。お墓があれば、墓石に刻む戒名を決めて納骨に間に合うように石材店などに手配する。読経をする僧侶へのお布施や焼香後の会食費などのため、まとまった現金を用意しておきたい。
親族が集まるタイミングだけに、故人を悼むとともに相続の話をする場にもなるだろう。事前に、故人の財産をひと通り把握しておくと話がスムーズに進む。