「たまたまその夜、私は大阪報道部のフロアで部長と一緒にいました。小池局長は部長の携帯電話にかけてきたのですが、その声は横にいる私にも聞こえるほどの大きさでした。ただ、小池局長がニュースを見て怒ったのなら、放送中か放送直後に連絡してくるはずなんです。ところが、実際には時間差がありました。19時からの『ニュース7』で報道後、局長から電話があるまで3時間くらい経っていた。
おそらく、その間にニュースを見た人物から、小池局長に『あんなニュースを出して、どうなっているんだ』というような連絡が入ったのでしょう。電話の後、部長は苦笑いをしながら『あなたの将来はないものと思え、と言われちゃいましたよ』と言っていました」
――小池局長と官邸の間には太いパイプがあるのでしょうか。
「小池局長は政治畑を歩み、政治部長も務めました。官邸と接点があっても不思議ではありません。官邸には地方勤務時代以来の知己もいますし……。森友問題をめぐるNHKの報道には安倍政権に対する様々な忖度がありました。以前はあり得なかったことです。NHKだけでなく、官邸はテレビ朝日の『報道ステーション』にも介入したと聞いています。時の政権が報道内容に露骨に介入してくる。実態は“忖度”でなく、“介入”なのです。
報道機関に介入するくらいですから、財務省など行政機関には平気で手を突っ込んでくるでしょう。官僚は自分たちの手足ですからね。そう考えると、森友との国有地の取引は、官邸の意向によってゆがめられた可能性もあるわけです」
――近財は、学園側が国有地に支払える上限を知ったうえで、それを下回る価格を設定した。相澤さんのスクープは、近財に背任の疑いを示す内容でした。しかし、大阪地検は立件を断念しました。
「東京サイドの法務省や最高検が『捜査は終わり、全員不起訴』という決め打ち情報を流してくるなかで、大阪地検特捜部は必死に跳ね返そうとしていました。8億円もの値引きは、国に損害を与えたと認定できるのではないか。何とか立件できないかと模索している検事が、幹部にも現場の一線にもいました。