■定期検診に25年間通い続け、すべての歯がピカピカな患者さん

 逆に言えば、だからこそ、歯科医師は、指導をきちんと守り、メインテナンスに通ってくれる、予防に熱心な患者さんに好感を持つのです。

 ある公務員の男性は40代の頃、歯周病の治療で受診されて以来、約25年間、定年後も欠かさず4カ月に1回のメインテナンスに通ってくれています。回数で言うと75回くらいになるでしょうか。

 自宅でもていねいな歯みがきを励行し、おかげで70歳近い現在も口の中はいつもきれいでピカピカ。むし歯も歯周病もなく、すべての歯が残っています。その患者さんが通院して15年ほどたった頃、しみじみとこう言ったのです。

「最初は先生にいわれたまま、メインテナンスに通っていましたが、最近、ようやくわかってきました。歯のケアをしていない同僚たちの中には歯がなくなって入れ歯になっている人が珍しくない。残っている歯も決してきれいとはいえません。彼らは『働き盛りの頃は忙しくて、歯医者に通えなかったからね』と言っています。でも私は違った。忙しかったけれど通い続けました。今、きれいな歯でいられるのはそのおかげ。大変だったけど、通い続けて本当によかったと思います」

 この言葉を聞いて、歯科医師として心からうれしく思いました。

 歯科医師も一人の人間です。患者さんに自分の診療に対する姿勢を理解してもらえたり、指導内容をきちんと実行してもらえたりするとうれしいものなのです。これは患者さんとの間に信頼関係が築けたという喜びでもあります。

 信頼関係ができると治療の疑問点などについても患者さんが遠慮なく聞けるようになります。そのことが治療に対する不安を払しょくし、よりよい治療にさらにつながるという好循環が生まれます。

 この点を意識して歯科医院にかかってみてください。

◯若林健史(わかばやし・けんじ)
歯科医師。若林歯科医院院長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演

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