それが急転直下、辞任劇となったのは、なぜか。日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が11月19日、金融商品取引法違反容疑で東京地検に逮捕され、高額報酬が世間の批判を浴びたことも影響したようだ。経産省は12月3日に高額報酬の白紙撤回を慌てて発表した。
「経産省がファンド作りで舞い上がっていたところ、菅義偉官房長官から(高額報酬で)怒られて慌てたというふうに聞いています。そこから結局、仲間割れが始まった。世耕大臣は全部、田中社長のせいにして、田中さんだけを切って逃げきろうとした」(古賀氏)
世耕大臣と言えば、トランプ大統領との関税交渉や日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕された際には、フランスでルメール財務相と会談するなど、外交交渉で表舞台に立つことが多い。その世耕大臣は12月4日、記者会見し、自身は監督責任を取って給与1カ月分を、嶋田隆事務次官を厳重注意処分として給料1カ月分の30%を返納すると、早々と処分を発表した。
「世耕さんは単なる監督不行き届きだけの責任を取り、あとは事務次官や他の人達に責任を押しつけ、私は慌てて止めさせたんだという絵にしたかったのでしょう。JIC関係者の話では、それに一番怒ったのは、意外にもJICの社外取締役で取締役会議長の坂根正弘さん(コマツ相談役)だったそうです」(古賀氏)
坂根氏は自らが辞めると言い出し、取締役9人全員の辞任に至るのに、大きな影響を与えたという。
「坂根さんは安倍首相のお友達。世耕大臣は安倍側近なので、坂根さんは田中社長ではなく、自分達についてもらえると思ったのでしょうね」(同前)
それが誤算となり、田中社長は記者会見で「ここ数カ月間、次第に増幅されてきた経産相に対する不信感が、決定的なものになった」「日本は法治国家ではない」と経産省に対する不信を口にした。
官民ファンドがゾンビ企業の救済に走っていることも明らかになった。ゾンビ企業とは破綻寸前まで行かなくても業績不振の企業のことで、社外取締役でスタンフォード大学の星岳雄教授は辞任する理由として「JICがゾンビ企業の救済機関になろうとしているときに、社外取締役としてとどまる理由はない」と批判の声を上げた。
東芝、シャープ、JALなど業績不振に陥った大企業は多い。
「政治家もお役人も企業を助けて、立ち直らせ、恩を売りたいのではないか」(前出の田中教授)