このため、民間企業である琉球セメントの桟橋を利用するという“裏技”に走った。名護市安和(あわ)にある同社の敷地に、大型トラックが続々と土砂を運び入れた。
しかし、「桟橋はセメントの出荷や材料を搬入するために県から許可されたものです。目的外利用と言われても仕方ない」(沖縄経済界関係者)と疑問視する声が挙がっていた。
そればかりか、今は反対派市民らの抗議を受けて撤去されたというが、桟橋の入り口付近には「カミソリ刃付き鉄条網」まで張り巡らせて警備していたというから尋常ではない。沖縄の反発は高まるばかりだった。
土砂の運搬船は東シナ海側の桟橋を出ると、沖縄本島の北側を回り込む形で、太平洋側の辺野古へと向かう。だが、搬出作業を始めた今月6日、市民らがカヌー10艇ほどで船を取り囲み、およそ3時間余り立ち往生させた。
桟橋の入り口で座り込みをしていた、北谷町の村上有慶さんがこう語る。
「辺野古の海では進入制限区域が指定され、抗議する人たちに海保(海上保安官)たちはゴムボートで体当たりしてきたり、カヌーを転覆させたりしてきますが、桟橋の沖合は立ち入り禁止などの制限は何もありませんからね。海保も遠巻きにして『離れて下さい』と言うだけで、手を出せませんでした」
痺れを切らした海保らは「危険だから」という理由で反対派市民らを強引に排除、拘束した。その後、4隻の土砂運搬船が辺野古海域へ向かったのだ。
運搬船は辺野古に着くと、キャンプ・シュワブ北側の護岸に接岸。再び大型トラックに土砂を移し替え、シュワブ内の仮設道路を走行して土砂の投入箇所に向かう。こうした作業をくり返して全体で約160ヘクタールの海域を、2062万立方メートルの土砂で埋め立てる計画だ。
「1隻の運搬船にトラック百数十台分の土砂しか積めないようですから、ものすごく手間ヒマがかかる。気の遠くなるような話です。私たちの抗議活動も続くので、思惑通りに埋立てが進むと思ったら、大間違いです」(村上さん)