昨年、68歳で会社を東証ジャスダックに上場した糸井重里さん。作家の林真理子さんとは古くからのお付き合いということもあり、久しぶりの再会で会話に花が咲きました。仕事に対する姿勢や生き方にマリコさんが迫ります。
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林:糸井さん、11月で古希なんですね。
糸井:まさか自分が70歳になるとはねえ。びっくりです。
林:それで今、ますますご活躍で。糸井さんがやっている「ほぼ日」は、去年ジャスダックに上場なさいましたよね。ずっと昔、私が糸井事務所でお世話になっていたころの糸井さんは、一人でやってらしたアーティストだったので、まさかこんな会社を経営する才能があるとは思わなかったです。
糸井:才能じゃないと思う。しょうがなくやってるんです。一人でやってたときも「しょうがなく」だったかもね。でも、チームでプレーするというのが、もともと好きだったんじゃないかな。友達と会うのが好きだったし、代理店とか行くと部活っぽいことやってたりしますよね。ああいうのがうらやましくてしょうがなかったです。
林:そうなんですか。「ほぼ日刊イトイ新聞」が始まったときに、あれはまだ糸井さん個人の延長のような感じでしたけど、そこから急速に発展して、昔のイメージとかキャラクターを保ちつつ、今は「ほぼ日手帳」はもとより、いろんなものをつくって売ってるんですね。
糸井:あれから20年もかかってますからね。昔と同じ部分と、「多少大人にならなきゃな」みたいなこととが、タテ糸ヨコ糸になってるんじゃないかな。それが組み合わさると強くなる。強くなるとやれることも増えていく。そしてうまくいくにしても失敗するにしても影響力が大きくなって、「今のままの自分じゃダメだ」となっていく。その繰り返しじゃないですかね。
林:稼ぎ頭の「ほぼ日手帳」は78万部売れていて、日本でいちばん売れている手帳なんでしょう?
糸井:おそらく、単品としてはね。
林:最近、スマホをかざすとそこの国の情報が出てくる地球儀(「ほぼ日のアースボール」)もつくったんですってね。社員の方々が「こういうのをつくりたい」と糸井社長にアイデアを出して、ゴーサインを出すわけですか。