2018年4月、網羅的がん遺伝子検査が先進医療に認められ、国が推進するがんゲノム医療が動き出した。週刊朝日ムック「がんで困ったときに開く本2019」では、検査を担う会社を取材した。
【がんゲノム医療における患者と病院の関係性は? こちらで詳しく解説】
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がんゲノム医療とは、「プレシジョン・メディシン(精密医療)」といわれる医療で、個々の患者のがんの原因遺伝子を調べ、その結果に基づいて治療をおこなうものだ。従来の治療法が臓器別のがんで有効性が高いと示された治療をするのに対して、がんゲノム医療は患者個人の遺伝子異常に合わせて治療をする。100以上の遺伝子を網羅的に調べることができる検査で、患者の遺伝子異常を検出し、もっとも有効とされる治療薬に結びつけることを目指す。
網羅的がん遺伝子検査は、国内ではこれまで臨床研究や自由診療という形で、一部の施設でおこなわれてきた。それが2018年春に、11の中核拠点病院と連携する100の病院が指定され、国はがんゲノム医療の提供態勢を整備し始めた。連携病院で採取した患者の検体(腫瘍組織・血液)について、中核拠点病院で検査をし、その結果を連携病院へフィードバックして患者に伝える。同時に、国立がん研究センターのがんゲノム情報管理センターにデータを蓄積して、将来の治療方針や新薬開発に役立てることをもくろむ。
■先進医療から保険適用へ
国立がん研究センターが開発した試薬「NCCオンコパネル」を用いた網羅的がん遺伝子検査が今春、先進医療として認められた。先進医療とは、厚生労働省が将来有望と認めた医療に対して、例外的に保険診療と自由診療を併用できる制度だ。この検査は、国立がん研究センターを中心とする臨床研究「TOP-GEARプロジェクト」で臨床現場への導入に向けた検証が進められてきた。
このプロジェクトにおいて検査の測定、解析部分を担当するのが、シスメックスとその子会社の理研ジェネシスだ。シスメックスは、国立がん研究センターと共同で一連の検査システムを構築し、体外診断用医薬品・医療機器として薬事承認、保険適用を目指している(18年6月末現在)。理研ジェネシスは、がんパネルを用いた検体測定から検査結果報告までを担う。