サングラスをかけている人を、なんとなく警戒してしまう。悪ぶったり威嚇したりするためにサングラスをかける……。サングラスはなぜ人の心を不安にさせるのでしょうか?
心理学を専門とする山口真美・中央大学教授は、人の表情を読み取る際に、日本人と欧米人には文化差があり、そのことが関係していると話します。山口氏が自著『損する顔 得する顔』(朝日新聞出版)でも明かしている、人の表情を決定づけるパーツについて紹介します。
* * *
欧米のほうがサングラス人口が多い理由としてよくいわれるのが、色素の薄い欧米人の青い目や緑色の目は、黒い目と比べると、紫外線に弱くてまぶしいからということ。でも、日本人にサングラス人口が少ないのは、黒い目でまぶしくないから、というだけではありません。
日本人の平べったい顔にサングラスはしっくりこないという理由も大きいですが、それ以上に日本人は、目を隠すことに忌避感があるようです。サングラスを外さずに人と応対するのは相手に失礼だという礼儀への意識がありますが、それだけではなく、サングラスをかけている人をなんとなくうさんくさく感じることもあります。
そんな日本人にとっては衝撃的な映像を、2018年の平昌オリンピックの記者会見で目にしました。先にも話した、前人未到の二刀流金メダルに輝いた、チェコのエステル・レデツカ選手。予想外の金メダルを獲得した後のノーメイクの記者会見を、ゴーグルをしたまま決行し、それは日本人にとっては失礼にも見える映像でした。これが日本人女子だったら、ノーメイクを隠すためにマスクを使うのではないでしょうか。
日本人はサングラスなどで目を隠すことを、意識下で嫌っている可能性があるのだと思います。その理由は日本人が目で表情を読むことにあるのだと思うのです。ここで、表情の研究の歴史をたどってみましょう。古くは進化論を唱えたダーウィンが研究しています。
彼の視点からすると、表情は動物から進化したものであり、人類全般に共通であるというのです。その証拠として、異文化をまったく知らない未開の国の住民であっても、初めて見た異国の人々の表情を読み取れることが、多くの研究者たちから報告されてきたのです。ところが最近、こうした考えに反証があがっています。
もちろん私たちはあらゆる国の人の表情を読み取ることができています。ですが、それぞれの表情を詳しく分析すると、小さな違いがあることがわかりました。