浪越徳治郎さん。香川県出身で北海道育ち。幼少時に病床の母親の痛みを和らげようとしたことが指圧につながった
浪越徳治郎さん。香川県出身で北海道育ち。幼少時に病床の母親の痛みを和らげようとしたことが指圧につながった
基本圧点分布図(後面) (週刊朝日2018年11月16日号から)
基本圧点分布図(後面) (週刊朝日2018年11月16日号から)
正しい母指圧の操作と指圧の注意点  (週刊朝日2018年11月16日号から)
正しい母指圧の操作と指圧の注意点  (週刊朝日2018年11月16日号から)

 紅葉の季節を迎え、これから寒さが厳しくなります。体も心もポカポカになる指圧を試してみませんか。力をかけず優しく押すだけで大丈夫。家族のコミュニケーションも深まります。

【基本圧点分布図はこちら】

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「指圧の心は母ごころ、おせば生命(いのち)の泉湧(わ)く」

 このセリフを残したのは2000年に94歳で亡くなった浪越徳治郎氏。指圧を体系化し世間に広め、「指圧の神様」と呼ばれた。テレビ番組に晩年も出演し、「ワーハッハッハ」と笑う明るいキャラクターを覚えている人は多いだろう。技術は「浪越学園 日本指圧専門学校」(東京都文京区)を通じて、受け継がれている。

 同校教務課長の高橋雄輔さんは、指圧の心構えをこう説く。

「大事なのは施す側の手当てをしてあげたいという思いと、受ける側の相手に委ねる気持ちです」

 小さいころおなかが痛いとき、母親がそっとおなかの上に手のひらをのせてくれて安心したという経験があるだろう。相手を思いやる気持ちがスタートだ。さらに「指圧点」をうまく押せば、より健康になれる。

 まずは基本を覚えよう。頭から足先まで、体の中心に沿って多くの指圧点がある。手や指、腰とお尻の周辺にもあり、このうち「浪越圧点」は重要な部位のひとつだ。

 体の前面や側面にも頭から足先まで指圧点は続いている。目やのどの周り、胸や腹、関節周囲部や足の甲にもある。

 これらの指圧点を押すわけだが、基本型となるのが「母指圧」。親指の第二関節(基節骨と中手骨の関節)を少し曲げ、指紋部で垂直に力をかける。手のひらを浮かせて親指以外の4本の指で支えをつくる。

 これをマスターできれば、指関節に負担をかけずに押せるようになる。指の形は個人差があるため、この基本型をつくるのが困難なケースも。自分の指の形状を知って、無理なく押せるようにしたい。

 母指圧は片方の手だけでやる「片手」、両親指の先端を接し約45度開いて同時に押す「両手」、片方にもう一方を重ねる「重ね」の3種類ある。指圧点は様々なので、力が入れやすく押しやすいやり方を選ぶ。

 大切なのは力を入れすぎないこと。相手が心地よいと感じる「快圧」を心がける。強い力を加えると、圧迫骨折の恐れもある。まずはごく弱い力で始めよう。うつぶせの人を上から押す「伏臥位(ふくがい)」の場合は、マットやタオルを胸に当てるなど、力がかかりすぎないような対策も必要だ。

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