北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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(イラスト/田房永子)
(イラスト/田房永子)

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回はパンダ、シャンシャン好きになった友人について筆を執る。

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 韓流好きの友人のFacebookが、最近、シャンシャン一色になっている。上野動物園29年ぶりの奇跡のジャイアントパンダの女の子、シャンシャンだ。聞けば、好きなスターが兵役にいった空しさに鬱々としていたところ、心の隙間にすーっと入ってきたのがシャンシャンだったという。

「今はもう、すっかりシャンペンになっちゃって(ご存知のように韓国語でファンのことを『ペン』と言う。例えば東方神起のファンは『トンペン』と呼ぶ。なのでシャンシャンのファンはシャンペンと呼ぶのだと彼女は主張)」

 意味わからない! どうして? と混乱する私に彼女はケータイを取り出し、大量のシャンシャン写真を見せてくれた。そこにはでんぐり返しするシャンシャン、ママのシンシンとじゃれるシャンシャン、笑っている(ように見える)シャンシャン、カラス(カ太郎とファンの間で名がつけられているらしい)と触れあうシャンシャン、そして「徹子の部屋」に出演する飼育係の齋藤さん、その齋藤さんと見つめ合うシャンシャン、シャンシャンの木登りを床を掃除しながら横目で見守る齋藤さん……と次々にシャンシャン+職員の齋藤さんが出てくるのだった。

 確かにかわいいけど……と思っていたら彼女の語りが始まった。

「パンダって未だに絶滅危惧種なんだよね。1900頭以下しか野生にいない。こんなにかわいいのに、それだけしかいないのは、地上の弱者が徹底的に酷い扱いをされた結果なんだと思う。政治やビジネスに乱用されてきたあげく絶滅の危機に晒されて、これから生まれてくるパンダたちは全て繁殖目的。ずっと経済的な暴力の犠牲になってきたんだよね……」

 ……あれ? 飼育係の齋藤さんが、救世主に見えてきた。経済暴力の果ての乾いた世界を、上野動物園のジャイアントパンダの部屋は癒やし、取り戻そうとしているように見えてきた。

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