一方、粘膜に沿って這うように広がる「上皮内がん」は、浅いがんだが、悪性度が高く、放置すると筋層にまで達するがん(浸潤がん)になる可能性が高い。上皮内がんにはBCGを膀胱内に注入し抗腫瘍効果を狙う。
浸潤がんの場合は、転移がなければ膀胱を全て取り(膀胱全摘除術)、尿の出口を新たに作る尿路変向術が行われる。尿路変向術には、小腸の一部を尿道代わりにして腹部の出口につなぎ、尿バッグにためる回腸導管、小腸や大腸で代用膀胱を作り、自分の尿道につなぐ自排尿型代用膀胱などがある。後者は、外見上はよいが、尿失禁や排尿障害を起こすこともあり、技術的にも難しいので減る傾向だ。
■早期発見・治療が重要術後も検査を欠かさずに
最大の危険因子は喫煙で、ほかに染色用化学物質を扱う職業での発生率の高さも知られる。症状としては痛みを伴わない血尿があげられるが、血尿の色や量は悪性度とは関係ない。小牧市民病院腎移植センター部長の上平修医師はこう話す。
「血尿は腫瘍が1~2センチほどで出ることが多く、その段階であればほとんどの場合はTURBTのみで根治も可能です。ところが、血尿は1、2回出て止まることが多く、それで治ったと思い、受診しないのが問題です」
とくに女性は経血を見慣れているせいか、受診が遅れがちだ。
「早期発見できれば治りやすいがんですが、4~5割は再発するため、術後も定期検査は欠かせません。いちばん怖いのは、膀胱を取らずに済む方法はないかと病院を決めきれないうちに進行してしまい、手遅れになること。病院選びは、TURBTなら年間50例以上が一つの目安。また、尿路変向術は、慣れた医師のほうが合併症が少ないので、全摘手術数の多さも参考になります」(上平医師)
※『いい病院2014』から抜粋。医師の所属などは当時