授業前に姿勢を正す児童。深谷市立桜ケ丘小学校(撮影・吉崎洋夫)
授業前に姿勢を正す児童。深谷市立桜ケ丘小学校(撮影・吉崎洋夫)
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正しい姿勢での座り方(イラスト・藤井アキヒト)
正しい姿勢での座り方(イラスト・藤井アキヒト)

 座りすぎは良くないというが、職場でも学校でも長時間座って作業せざるをえないのが現実だ。ところが、座る姿勢によっては、脳が活性化。集中力が高まり、効率が上がり、勉強や仕事にいい影響を及ぼすという。脳が目覚める正しい座り方を試してみよう。

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「腰骨タイムです!」

 授業開始前、日直の児童がこう号令をかけると、教室にいる児童が「はい!」と反応し、姿勢を正す。静まり返った教室で、教員が「両足をピタリと床につけて」「おへそをぐっと前に出して」など正しい姿勢を促していく。

 深谷市立桜ケ丘小学校(埼玉県)では、正しい姿勢を身につける「立腰(りつよう)教育」に取り組んでいる。立腰とは、座面と背骨が直角になるように「腰骨を立たせる」こと。これがいい姿勢のポイントなのだ。朝の会や授業開始前に、姿勢を正し、腰骨を立たせる意識付けを行っている。

 たかが姿勢と思うなかれ。授業中の効果は無視できないという。

「授業前に正しい姿勢をとることで、それまでざわついていた教室が一気に静かになり、集中力が増した状態で授業に入れる。授業中にも、折に触れて、この姿勢をとるように指導しています。子どもたちの学習の効率が高まっています」(同校の立腰推進教員、黒澤小百合さん)

 桜美林大の鈴木平教授の調査によると、姿勢を良くした状態で計算問題を解いたところ、解答スピードが5~10%ほど上がる結果となったという。

 そのメカニズムはこうだ。姿勢が良くなることで、血流が良くなり、脳が活性化。集中力も高まる。反対に、背筋が曲がっているなど姿勢が悪いと、内臓が圧迫され、呼吸が浅くなり、脳の活動が低下すると考えられる。集中力が落ちるだけではなく、腰痛や肩こり、頭痛の原因にもなる。鈴木教授はこう述べる。

「姿勢が悪いと知らず知らずのうちに体に負担をかけるだけではなく、うつむき姿勢でいると憂鬱な気持ちにもなります。姿勢を良くするだけで仕事の効率も上がるし、受験生であれば、ワンランク上の大学合格も不可能ではありません」

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