京都大学の本庶佑特別教授(76)がノーベル医学生理学賞を受賞した。その功績は、免疫の「司令塔」であるT細胞の表面に免疫活動のブレーキ役である免疫チェックポイント分子「PD-1」の発見で、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)の開発につながった。オプジーボは現在、肺がんなどの複数のがんで画期的な治療法として効果をあげている。ここでは週刊朝日ムック「肺がんと診断されました」から、最新研究の状況をお届けする。
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肺がんの薬物療法で、注目されているのが免疫チェックポイント阻害薬だ。2015年にニボルマブ(オプジーボ)が、17年春にはペムブロリズマブ(キイトルーダ)が使えるようになった。
いずれも非小細胞がんのうちドライバーがん遺伝子が見つからない人で、PD-L1(後述)が発現している患者がおもな対象だ。がん研有明病院呼吸器センター呼吸器内科部長の西尾誠人医師はこう言う。
「免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験から約5年がたち、17年4月に実施された米国がん学会年次総会(AACR2017) で、初めてニボルマブを使った5年生存率が発表されました。結果は16%で、以前に報告された3年生存率約18%と数字に大きな変化はなく、長期間薬の効き目が得られること、効果がある人では長期生存していることが示されました」
免疫チェックポイント阻害薬の効き方は、抗がん剤治療や分子標的薬とは異なるといわれている。
「特に分子標的薬の場合、効果が表れるのが早い。治療開始から1週間くらいでがんが小さくなり、がんによる痛みも改善されます。奏効率(薬物療法の効果を示す割合で、画像診断で評価する)も90%を超える薬が多い。一方、1~2年使っていると耐性が出てきて薬の効果がなくなり、生存率がじわじわと下がっていきます。これに対して免疫チェックポイント阻害薬は奏効率が20%程度と高くはありませんが、効く人の生存率は落ちません。なお、薬の耐性については研究中です」(西尾医師)