
齋藤孝(さいとう・たかし)さん/明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書『雑談力が上がる話し方』は雑談力アップのバイブルといわれている。最新刊は『不機嫌は罪である』等。
(撮影/倉田貴志)"



言葉がうまく出てこないために、気まずい「間」があいてしまう。そんな瞬間は誰でも経験したことがあるだろう。なめらかに会話を交わし、人間関係を円滑に進めていくためにはどうすればいいのだろう。プロ2人のアドバイスを紹介する。
■会社編・夫婦編
当然のことながら、ビジネスマンにも「雑談力」は必須だ。取引先と「本題」ばかりを話しているようではいつまでも距離が縮まらない。
また、軽い雑談ができないようでは、転勤や人事異動で新しい部署に配属されても、なかなかその環境になじめないからだ。「個人情報を大事にする時代ですが、やはり人に親しみを持たれる自己開示はある程度必要だと思います」と、明治大学教授の齋藤孝さん。
「自分に関する情報を全然自分から語らないのは、相手に『心の垣根』を感じさせてしまうものです」
現住所や子供が現在通っている学校の話などは出さないにしても、
「自分の出身の都道府県、あるいは子供のころや学生のころにやっていた部活の話などは、オープンにしてもいい話ではないでしょうか。それをとっかかりにして相手との共通項が見つかったり、趣味の話に発展したりすることもあるわけですから、あまり防御線を張りすぎたりしないことですね」
そして話題に困ったときに話のネタになるように、自分なりのコミュニケーションツールを携帯しておくことも有効だ。
「これは何でもいいんですよ。ちょっと変わったボールペンを使っているとか、クスッと笑えるようなシールをスマホに貼っているとか。『これ、ご存じですか?』『これ、おもしろいでしょ』と、話のきっかけになるものであれば、何でもいいのです」
小さなお菓子も、雑談のきっかけをつくり会話をはずませる小道具として、十分使える。
「フリスクとかキットカットとか、サッと相手にも分けてあげられるものがいいですね。お菓子に関連づけて話題を膨らませることもできますから、何かしら持っていると非常に便利だと思います」
雑談はもちろん夫婦間でも大切だ。
「夫婦間こそ、雑談がなくなったら冷たい空気が漂うだけになってしまいます。夫婦の雑談をなくさないためには、まず『相手の関心事』に自分も少しは関心を持つことです」
たとえば最近、妻が料理に使う味噌の種類を増やし始めたのなら、まず褒め、それから細かい質問もしてみること。
このくらいの気遣いは、夫にも妻にも必要なのである。
「そしてお互いに愚痴ばかりをこぼすのはやめることだと思います。愚痴過多だと、やはりお互いが疲れてしまうものです。会社や、暮らしの中で腹の立つことを抱えることもあるかもしれませんが、抑えられることは抑えて、なるべく新しい情報で会話を交わすようにしたいですね」