西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、ペナントレースの行方を占う。
* * *
プロ野球のペナントレースも佳境に入ってきた。広島は順調に優勝マジックを減らしてきたが、6連敗するなど、優勝を目の前にして足踏みした。だが、2位以下を大きく引き離しているから問題はない。選手にプレッシャーはないだろう。
早く優勝を決められたら、残り試合は主力に十分な休養を与えられるし、若手にとってはチャンスが回ってくる。チームをよりよくするために、いい形で試合を使える。常勝軍団を作ると、勝つことに追われ、なかなか次世代の起用に目を向けられなくなるが、これだけ独走しての優勝であれば、“消化試合”を有効活用できる。見ている側としてはつまらない部分もあるけど、そこで若手が自信をつければ、チームの競争力につながる。中長期的に見ても意味は大きい。
一方でパ・リーグはソフトバンクが驚異的な追い上げで西武に追いついてきた。終盤になればなるほど、ホーム球場での戦いというものが選手に安心感を与えるものだし、だから本拠地の試合を大事にしてもらいたい。ソフトバンクとの直接対決では、残り4試合で、西武は本拠地で3試合戦える。このアドバンテージは通常の1試合より大きい。
1995年に起きた阪神大震災からの復興は全国的な盛り上がりがあった。私は当時、西武監督としてオリックスと対戦したが、やはり神戸での試合では、全国的なオリックスへの後押しもあって、やりにくかったことだけを覚えている。相手チームへのファンの声や重圧は、いくらメンタルを鍛えた選手であっても、影響を及ぼす。
この時期になると、どうしても小さなミスを指摘しなくなるものだ。みなさんも、劣勢に立たされた時ほど、細かいことを気にせずに長所をどう生かすか、という視点に立つでしょう。開幕直後だったら、細かい点も問題提起して、組織として改善の努力をしてきただろうが、この段階で負けがこむと、負のスパイラルに陥る。