帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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文章を書くことは生きるエネルギーを引き出す(※写真はイメージ)
文章を書くことは生きるエネルギーを引き出す(※写真はイメージ)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「文章を書くこと」。

*  *  *

【ポイント】
(1)がんとの闘いと認知症の予防は共通する
(2)自分に最も充足感を与えられるものは
(3)文章を書くことは生きるエネルギーを引き出す

 この連載を書き続けるにあたって、改めて感じているのですが、がんとの闘いと認知症の予防は共通するところが数多くあります。いずれも、人間をまるごととらえるホリスティックな視点から、免疫力、自然治癒力を高めていくことが求められるからでしょう。

 ダヴィド・S・シュレベールは精神科医で、米国ピッツバーグ医科大学院の臨床精神医学教授を務めます。脳腫瘍に侵され手術を受けましたが、再発。そこから、彼の闘いが始まりました。心身ともにどん底の状態を立て直し、通常医学とさまざまな代替療法を統合して用いることで見事に生還を果たしました。

 その一部始終を著したのが『がんに効く生活 克服した医師の自分でできる「統合医療」』(NHK出版)です。32カ国で出版され、世界で100万部を超えるベストセラーとなりました。彼は序文でこう語っています。

「本書では、人間に本来備わっているはずの防衛力についてまったく無知な医師であり研究者でもあった私自身が、どのようにして、見方を変えたのかについて語りたい」

 がんが再発することにより、彼は自分自身の体に対する見方を大きく変え、がんと闘うために、生き方そのものを見直します。

 なかでも、彼に生還のきっかけを与えてくれたエピソードが印象的です。

 化学療法を受け続け、もはやどうすればいいかわからなくなってしまった彼は、仕事も辞め、愛妻との仲も冷め切ってしまったのです。そのとき友人の心理療法士のマイケル・ラーナーが問いかけます。マイケルは元エール大学の社会学の教授で、がんと向き合う方法について多くの著書がある、その分野の第一人者です。実は私も面識があります。マイケルの問いかけは、「うまくいかないことばかりを考える代わりに、自分に最も充足感を与えられるものは何か考えよう」というものでした。

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