それでも今、振り返って思うのは、やりがい・楽しさといったものは、仕事をする中で見つかる場合が多くあるということです。どこか組織に入ってみて、やりたくないことを経験する中で、おのずとやりたいことが明確になってくることもある。

 現に僕も、やりたくないなあと思いながらやらされる仕事のほうが断然多かった。楽しいと思える仕事は五つの中に一つあるかないか。組織と自分との違和感というのは、仕事を始めた初日からずっと持っていました。でも、そのおかげで今、本当に自分がやりたいことというのがはっきりしてきたと思います。僕の場合、それが夜間中学や不登校の子どもの支援だったりするわけですが。

 とにかく「目的意識を持たないといけない」という強迫観念は、今すぐ捨てたほうがいい。目的が見つからなければ、「比較的これならやれそうだ」というものを見つけて、とりあえずでもやってみる。合わなければ、やめたらいい。今の世の中、一つの組織や仕事にしがみつく必要なんてないですから。

 ぼーっと過ごしていて、全然いいんですよ。まずは、本を読んだり、映画や芝居を見たり……何でもいいですが、そのときに自分が感じた「ちょっと気になるもの」が何か、意識してみるといいかもしれません。そうしているうちに、ぼんやりとした意思のようなものが、自分の中にできてくる。

 人生の目的は早くから見つかる人もいれば、50歳を過ぎてからという人だっている。いつからスタートしても遅くないと思います

週刊朝日  2018年9月14日号

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?