■暇な時間は2時間以内、不安に駆られないように
パートナーと死別するなど高齢者の一人暮らしが始まると、孤独やさみしさに襲われることも多い。それを避けるには、意識して暇な時間を作らないことがポイントとなる。というのも、そうしたネガティブな感情は“暇な時間”に湧いてくるからだ。
「一人暮らしの人の中で不安やさみしさの程度が小さい人は、総じて『暇を感じる時間』が少ない傾向がありました」(同)
定年を迎えたらのんびり過ごしたいと思っている人は多いだろうが、65歳以上でも働くのが一つの選択肢。実際、65歳以上70歳未満の男性の半数、女性3分の1は何らかの仕事についている。
一日の過ごし方として、何かをしていて「気がついたらこんな時間になっていた」というのが理想。夢中になれることなら、仕事やアルバイト以外のボランティア、趣味やサークル活動でもよく、家事やテレビを見ることでもいい。ただし、見たい番組を見るのはいいが、テレビをつけっぱなしの“だらだら”は暇を感じやすいのでNGだ。
朝起きてから夜寝るまで、暇を感じる時間は2時間までにとどめたい。というのも、このアンケート結果で、「独居はさみしくない」と答えた人が感じる暇な時間の平均は「2時間」だったからだ。ちなみに、「独居はさみしい」と答えた人は5時間だった。
「体を動かせるうちは体操教室やスポーツジムに通うのもいいと思います。介護が必要になったときを想定し、自宅を住みやすく変える計画を立て、改修するのもいいでしょう」(同)
体の自由が利かなくなってきても、ペースダウンしながら、夢中になれることを続けていこう。
■さみしさは好奇心で乗り越えられる
高齢者の一人暮らしにはさみしさがつきものと考えがちだが、『おひとりさまの介護はじめ55話』などの著者で、ノンフィクションライターの中澤まゆみさんは、「その正体は“欠落感”。ずっと一人で暮らしている人は、耐性がついています(笑)」。さみしさを感じたときの逃げ場、乗り越える力となるのが、好奇心だ。
「興味を持てるものを見つけたら、行動することが大事です。ヨガや太極拳なら体を動かせますし、病気や介護についての講座では、知識が深められます。最近は無料で開催される講座も多く、自治体の広報には情報が掲載されています。シニア向けの講座が大学やカルチャーセンターにもたくさんあります」(中澤さん)
気の合う仲間と出会う可能性も高くなり、同世代ではなく、若い世代とも交流を深められる。さまざまな考え方に触れることで視野が広がっていく。
「楽しそうな仕事を始めてもいいと思います。認知症カフェや子ども食堂などはどこも人手が足りません。作業を通じてコミュニケーションすることが多いので、人と話すのが苦手な人が始めるにもハードルが低いと思います」(同)
■できないことは他人を頼る、娘や息子におんぶにだっこは×
高齢になってからの一人暮らしで大切なのが、「自分でできないことはほかの人に頼ること」。人から支援を受けること(受援)が、自立のポイントなのだ。
「単身けん(ひとりで生きるために、単身者の生活権を検証する会)」の石川由紀さんは、上手に周りから支援を受けることを「受援力」と名付け、高齢者が身につけるべきひとり力の大事な要素だと考える。
「何でも一人で解決しようと頑張ることが、ひとり力ではない。とくに高齢者は自分だけではできないことが増えてくるため、周りから支援を受けることが大切です。しかし、今の高齢者は人にお願いするのがとても下手」(石川さん)
上手になるには、まず「自分は年上で経験が豊富」という意識を捨てること。
「今年の猛暑がいい例。ニュースなどでは“これまで経験したことのない暑さ”なんて言っていますよね。残念ながら、今は昔の経験が役立たない時代だと思ってほしい」(同)