誰がそんなことを教えたのだろう。知識だけが先行するわけでもなく、心技体が正しいバランスで整った選手だと感じた。
1回戦を見た時に驚かされた。実際に吉田投手の投球を見るのは初めてだったが、投球フォームに無駄がない。馬力がどれだけあるかは別にして、投球フォームには現時点で修正すべき点は見当たらなかった。具体的には左腰、左肩が開かず、踏み出した左足にしっかり右腕が巻き付いてくる。下半身から得たパワーが一塁側や三塁側に逃げるのではなく、体全体が一直線に捕手のミットへ向かうイメージだ。
ギアチェンジと簡単に言うが、投球フォームの再現性が高くないと、ボールは暴れる。右投手なら力を入れた際に右打者の内角高めに抜けるか、ひっかいて外角低めのボールになる。しかし、吉田投手は同じフォームで、体全体の力の配分で球速を変えられる。右投手で一番難しい左打者のひざ下、右打者の内角高めもシュート回転がない。
球速も力を入れた時は150キロ近くになるが、ホームベースを通過する時にスピードが失われていない。打者がホップするように感じるのもそのためだ。
甲子園が終わればプロ野球のペナントレース、優勝争いも佳境に入る。プロの選手も高校野球から刺激をもらっただろうし、熱い戦いを期待したい。
※週刊朝日 2018年9月7日号