東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
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西武黄金時代を率いた森祇晶氏(左)と握手を交わす西武辻監督。中村の復活もあり、得点力は当時を上回る勢いだ (c)朝日新聞社
西武黄金時代を率いた森祇晶氏(左)と握手を交わす西武辻監督。中村の復活もあり、得点力は当時を上回る勢いだ (c)朝日新聞社

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、今季の西武に期待を寄せ、その理由を解説する。

【写真】西武黄金時代を率いた森祇晶氏と西武辻監督

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 西武がここにきてしっかりと白星を積み重ね、ペナントレースを優位に進めている。最後にリーグ優勝したのは10年前の2008年。今年こそ、の思いは誰もが抱えている。まだ接戦となった時の不安はあるが、開幕からずっと支えてきた攻撃陣が、夏になって、また得点力が増している。

 その大きな理由の一つが中村剛也の復調だろう。8月7日のオリックス戦では、後半戦だけで10本目となる本塁打を放ち、通算1千打点を決めた。6度の本塁打王に輝いた男が下位打線に座る。輝きを取り戻したら、相手投手にしてみれば、本当にひと息つくことのできない打線になるよね。

 その7日のオリックス戦でもラジオの解説で球場にいたが、下半身がしっかりと使えてボールに力を伝えられていた。アルバースのスライダーを捉えたものだったが、変化球に対して下半身がしっかり粘れるから、ミートポイントの時に力が伝わる。幾多の本塁打王に輝いた選手だから、パワーがしっかり伝われば、ボールは飛んでいく。

 前半戦は肩を痛め、なかなか守備につけなかった。今は三塁の守備について下半身を使っているから、よく動いている。下半身が使えなければ、右投手の外角に逃げていく変化球に対してタイミングも崩れるし、外角にバットが届かない。でも、今はしっかり届いている。

 秋山、源田の1、2番は出塁率も高いし、足もある。3番からの浅村、山川、森は充実しており、故障さえなければ大崩れはない。そこに下位打線でベテランの栗山がいて、本塁打王を獲得した中村、メヒアがいる。

 相手となる先発投手からすれば、3巡目をいかに抑えるかという1試合全体を見通したゲームプランを立てにくいよね。この打線だと1巡目から封じ込めていくことを優先せざるを得ない。なぜなら、一回火が付くと大量失点の恐れもあって試合が作れないからだ。もし1巡目から全力で行っても、球の軌道に慣れた西武の打線は、2巡目以降に順応してつかまえられる状態にある。

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