好きな自治体に寄付すれば、特産品などがもらえるふるさと納税。自治体間の競争は激しく、寄付金に対する「返礼率」が3割を超える商品も多数ある。家電や商品券など地場産品以外もあり国は改善を求めてきたが、従わないとして公表された自治体が複数ある。あえて“国と闘う”本音は?
ふるさと納税のメリットは、地方の農林水産物や特産品などいろんな返礼品をもらえることだ。寄付金を集めるための返礼品競争が過熱する中で、総務省は引き締めを図ってきた。
昨年4月には寄付金に対する「返礼率」を3割以下にすることや、家電や金券類を扱わないよう求める通知を出した。今年4月には、返礼品は地場産品に限るよう新たに求めた。
7月にはルールを守っていない寄付額の規模が大きな自治体を公表し、改善を求めた。返礼率が3割以上で、地場産品以外を返礼品にしているにもかかわらず、通知に従わない12自治体だ。
総務省は通知は強制ではないとしているが、自治体が受け入れないのは極めて異例だ。どんな事情があるのか。
「うちは肉や米など人気を集める地場産品がない。“アイデア力”で勝負しなければ、自治体の格差が広がってしまうだけです」
こう主張するのは泉佐野市(大阪府)の担当者だ。2017年度の寄付額は135億円で全国トップ。前年度の約4倍と大きく伸びている。
返礼品を紹介するサイトをのぞくと、「黒毛和牛切落し1.75キログラム」「魚沼産コシヒカリ 15キログラム」などが並ぶ。和牛は鹿児島県産などで、米は新潟県のものだ。格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションの航空券に換えられるポイントといった、金券類に相当するものもある。
品数は前年度から約400品増やして1千品以上になり、返礼率は全体で45%に達する。まるで大手通信販売のサイトのようだ。やり過ぎではないかとの批判もあるが、担当者はこう話す。
「市内に本店、支店がある事業者に返礼品を提供してもらっている。和牛は地元の老舗が目利きしたお肉。航空会社のポイントは市内の関西空港の活性化につながった」
総務省の通知に従わない背景には、市の厳しい財政状況もある。関西空港へつながる道路や駅前整備などの費用がかさみ、04年に財政非常事態宣言を出し、09年には「財政健全化団体」に陥った。職員を6割減らすなどして14年に健全化団体から抜け出してはいるが、今後の地域活性化にはふるさと納税の寄付金に期待を寄せる。
「財政難で市内の大半の小中学校でプールがない。ふるさと納税のおかげで新しくプールが一つ設置でき、これからも順次整備していく予定です」(担当者)
みやき町(佐賀県)は72億円と寄付額が全国4位。佐賀牛など地場産品もあるが、他にも人気の返礼品がある。タブレット端末iPad(アイパッド)や、旅行大手エイチ・アイ・エスのギフトカードだ。返礼品を選ぶサイトでは、この二つは8月上旬の時点で、人気のため数カ月待ちとなっている。
担当者は返礼品の意図をこう説明する。
「ギフトカードの使途は限定されていないが、みやき町への里帰りに使ってもらいたい。iPadには町の映像が見られるアプリがついていて、町内出身者には地元を思い出してもらい、町外の人にはPRになります」