74歳までは肥(ふと)らないようにして、75歳以上になったら肥るようにしろというのは、なかなか難しい注文かもしれませんが、なるほど、というところもあります。

 75歳までの肥満の背景には運動不足があるという見方もあるのです。

 75歳ぐらいまでは、まだまだ元気な人が多いですから、しっかり動いて、BMIを下げるようにした方がいいということではないでしょうか。

 一方、75歳を過ぎたら、しっかり食べることに力を注いだ方がいいということなのです。高齢で元気な人は、よく食べます。肉などをモリモリ食べる人が少なくないのです。

 そういう私は82歳ですが、実は肉が大好きです。蕎麦屋さんで飲んでいて、シメは体にいいとろろそばと思っていて、ついカツ丼を頼んでしまったことが何度もあります。これからはどんどん食べればいいとなると、気が楽です。思わずカツ丼を頼んでも反省する必要がないのですから。

 臨済宗の中興の祖である白隠禅師が描いた禅画にすたすた坊主があります。お腹がぷっくり膨らんでユーモラスな姿なのですが、とてもゆったりして健康的な感じがします。本当は私もこのぐらいお腹が膨らんでもかまわないなと思っているのです。

週刊朝日  2018年8月10日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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