介護から離れたときは、運動をしたり、カフェでくつろいだり、人とつながる時間をつくったりして、気分転換を図ってほしい。運動はヨガや太極拳など、バランス感覚を養うものがお勧めです」(同)

「自助具(生活補助具)」の活用を勧めるのは、少子高齢化を研究する、ニッセイ基礎研究所社会研究部主任研究員の土堤内(どてうち)昭雄さん。自助具とは、運動機能が低下したり、障害があったりする人が日常生活の動作をスムーズに行えるよう工夫された器具や道具。介護する側の体力の消耗を防ぐことにもつながる。

「指に力が入らない人でも使える箸や、ドアノブや水道の蛇口を簡単に回すための器具など、さまざまなものがあります。介護で大事なのは介護度を進めないこと。要介護者がある程度自立できれば、介護者の負担も減ります。人によって合う自助具が違うので、ケアマネに相談するとよいでしょう」(土堤内さん)

 意外と知られていない、こんな対策もある。

「介護者自身が必要に応じて要介護認定をとることもお勧めしています」(宮澤さん)

 介護する側が要介護認定をとる最大のメリットは、利用できる介護保険サービスの幅が広がる点。基本的には介護保険サービスは申請した要介護者のためで、家族への支援には使えない。だが、介護者も要介護認定をとれば、それまで介護される側だけに使われていたサービスが介護者にも使えるようになる。介護する側も食事の用意や買い物、掃除、洗濯といった生活援助を受けることが可能だ。

 介護にはお金の問題も常につきまとう。長寿になるほど介護費用がかかり、貯金がショートするリスクもある。65歳からの介護保険サービスにも限界がある。土堤内さんが説明する。

「今の介護保険制度は、それだけですべての介護をまかなうようにできていません。介護の環境は一人ひとり異なります。状況に応じて、家族介護や介護保険サービスを適切に組み合わせることが重要です」

 その上で、夫婦間の介護には「リバースモーゲージ」の利用を勧める。

「リバースモーゲージとは、持ち家の自宅を担保に、住み続けながら金融機関から融資を受けられるシニア層向けの融資制度のこと。今の高齢者の持ち家率はとても高いので、それを活用するのです」(土堤内さん)

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