松本・地下鉄両サリン事件などで29人の死者を出した一連のオウム真理教事件で死刑判決を受けた林(現姓・小池)泰男死刑囚(60)ら6人の刑が26日、執行された。林死刑囚のほか、岡崎(現姓・宮前)一明(57)、横山真人(55)、豊田亨(50)、広瀬健一(54)、端本悟(51)ら5人。オウム事件での死刑囚は13人で、教祖の麻原元死刑囚(本名・松本智津夫)ら7人は7月6日にすでに執行されていた。1カ月の間で2回の執行は初めてで、残された死刑囚の精神状態を考慮し、早まったとみられる。死刑囚全員の刑が執行されたことで、一連のオウム事件に終止符がうたれたが、事件にはまだ多くの謎が残されている。阿鼻叫喚の地獄絵のような現場で被害者、医師、捜査員、脱洗脳カウンセラーらは何を思ったのか?
■「接見で林、端本ら死刑囚が見せた素顔」 オウム真理教家族の会会長
《死刑囚6人と接見した「オウム真理教家族の会」の永岡弘行会長がその長い道のりを振り返る。》
東京拘置所で土谷正実、新実智光、井上嘉浩、中川智正、林泰男、端本悟と会いました。
拘置所の土谷は最初は何も話さなかったが、やがて「後悔している。両親に会いたい」ということを言いだした。それで、うちの家内が土谷の母親に会いに行ったんですが、「あの子には会いたくない」とおっしゃった。その後、土谷には彼女ができて、獄中結婚しました。戸籍上結婚していないと、会うこともできないんですね。彼女とも私は長時間話をしたことがあります。結婚生活は3~4年は続いたが、彼女からある日、「アメリカへ行きます」と電話がかかってきた。数年前に離婚したようです。
新実とは何度も会っています。麻原をまだ、尊師と呼んでいた。高橋克也被告の公判に証人として出廷したときも、オウムのころから着ていたサマナ服でした。接見したときも、「親はお前を心配してるんだぞ」と言っても、黙して語らず、そういう感じになってしまいましたね。井上は拘置所で自殺を図ったことがある。彼は房内で眠れなくなって、睡眠薬をもらっていて、それを一生懸命ためて、一気に飲んで自殺を図った。私は驚いて、飛んでいきましたよ。「卑怯なことをするな。生きて償うほうがもっとつらいんだぞ」と叱ったら、唇を噛みしめて「わかりました」と答えた。何が好きか聞いたら「オートバイが好き」と言うので、バイクの雑誌を差し入れました。彼は2年くらい前まで、短歌を作って、私に送ってきていました。2015年に証人として井上が裁判に出廷したとき、彼のお父さんが会いたいと言うので、会ったことがあります。お父さんはただただ「申し訳ない」と言うばっかりでしたね。