一緒に見ている客は、最も多いときでも10人未満だった。待つことも、人に邪魔されることもなく、何時間でも好きなだけ見ていられる。パンダまみれ、至福の時間となった。
この訪問では、なんとパンダ基地を30回以上訪れているという夫妻とも出会った。当然、成都周辺のすべての基地に行ったことがあり、ボランティアも抱っこも体験しているが、昨年できたばかりのこの臥龍基地が、いちばん環境が素晴らしいそうだ。かつては和歌山のアドベンチャーワールドも頻繁に訪れていたそうだが、現在は「和歌山に3回行くと思って、成都に来ている」と笑っていた。
さらに夫妻の知人は、パンダを「永久養子」にしているという。ガイドにその金額を尋ねると、なんと100万元(約2000万円)! 金額に驚きすぎて、養子にすることでいったい何ができるのか聞き損ねたことが悔やまれるが、公式ウェブサイトを見る限り、少なくとも命名権が与えられるようだ。
こうした料金設定を考えると、上野をはじめとする各国の動物園へのレンタル料が1頭1億円という噂も、真実なのかもしれない、と思う。だが、こうした資金をもとに中国のパンダ基地が行う繁殖や野生化プログラムといった長年の保護努力によって、2016年には国際自然保護連合の「絶滅危惧」リストからジャイアントパンダが外されるまでに個体数が回復したのも事実だ。
シャンシャンが1歳を迎えた翌朝、性懲りもなく上野動物園を訪れた。開園1時間前にもかかわらず、すでに長蛇の列ができていた。入場券を買えたのは、なんと開園から40分後。そのときにはすでに「パンダ観覧待ち時間180分」の看板が――すごすごと引き返した記者だった。
子パンダまみれになれたことだし、パンダ保護の一助にもなったことだし、3万6000円でも安かった、と思うことにしよう。(本誌パンダ取材班)
※週刊朝日 2018年6月29日号