成都市中心部からチャーター車でおよそ2時間、臥龍基地に到着。まず、パスポートの提示と誓約書への署名を求められた。1つはボランティアに関する注意書きと誓約書、もう1つは「寄付」に対する誓約書だ。実は、「基地への寄付」の“特典”なのである。費用はいずれも、パンダ保護のために使われるという。交通費を含む費用しめて約8万円を中国元の現金で支払うと、洋服の上から青いツナギを着用し、カメラと水以外はロッカーに預けるよう指示された。

 まず連れていかれたのは、成年(大人)パンダ舎。ボランティアは、掃除からスタートだ(表3)。食べ残しの笹を片付け、あちこちに散らばるフンを拾って歩く。パンダの餌は80~90パーセントが笹のため、匂いはほとんどなく、個人的にはまったく気にならなかったが、中には「お金を払って、なぜ働かなくてはいけないのか」とぼやく参加者もいた。

 掃除が終わると、いよいよハイライトの「抱っこ」タイムだ。

 幼年(子ども)パンダ舎に入る前に、また別のツナギに着替えさせられた。靴の裏を消毒してから、青いビニールの靴カバーをつける。さらに手にも消毒液を吹きかけられ、透明の薄手のビニール手袋をつけるという厳重さだ。ここで、カメラは1台だけ、許可された1人30秒以外は写真撮影禁止、動画は禁止、頭や背中には触ってもいいがそれ以外は禁止、と係員に厳しく言い渡され、呆然とする。

 そのとき、キューイ、キューイ、という声が聞こえてきた。見れば、子パンダが檻の鉄柵に登ろうと四苦八苦している。か、かわいい……! 柵の隙間から懸命に手を伸ばす子、柵から下りられなくなる子など、眼前50センチの距離で繰り広げられる光景に、しばし身悶えする。

 ボウルに入ったミルクを飼育員から与えられた子パンダが、嬉しそうに飲みはじめた。その様子に見とれていると、早く早く、と檻の中へ入るように急かされた。

 そっと背中に手を乗せる。頭を撫でる。ところが、子パンダはミルクに夢中で、顔を上げてくれない。同行したガイドが写真を撮ってくれるが、鼻先から下がボウルに隠れてまったく見えない状態だ。係員に、子パンダの顔を上げられないかと頼むも「無理」とあっさり却下される。撮影は30秒と、一瞬で終了。呆然としたまま、再び、早く早く、と檻から追い出された。

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