■オオスカシバ(チョウ目スズメガ科)
黄緑色のビロードのような身体と透明な翅(はね)を持っていて、まるでヘリコプター。ハチドリのような飛び方をするのがオオスカシバというガの一種で、花の蜜を吸いながら飛ぶ様子に、大抵の人は「うわっ、蜂」と逃げるんだけど、針で刺すような危険は一切なく、とても美しい。
子どものころの僕は、カマキリが好きだったし自然の生態系に興味があったから、よく昆虫を餌としてカマキリに与えてました。セミを与えたときは、半分食われても翅を動かしてビービーとすごく大きな音で鳴いている姿を見て、頭はもうないのに、セミのどこにその意思があるのか、と考えていた。もし日本語に翻訳できたら、「ふざけんな、食うなよ」と怒っているんでしょうね。でも、オオスカシバだけは、カマキリに与えてはいけない、と思った記憶がありますね。飛んでいる姿を見て、けっして触ってはいけない、と思わせる気高さを感じました。
■スズムシ(バッタ目コオロギ科)
子どものころ、僕は昆虫がいなくなる秋が大嫌いでした。それでも、鳴く音で夏の終わりを知らせてくれるスズムシは、小動物が飼えそうなほど大きな水槽で100匹くらい飼っていました。たとえばセミは、捕まえてかごの中に入れると、「非常事態」なのか、鳴かなくなるんです。でも、スズムシは水槽であっても、ちゃんと音を聴かせてくれる。
カマキリもそうですし、ほとんどの虫は、鳴き声など出しません。でもスズムシは、飼育環境であっても、野原にいるような生態系を見せてくれる昆虫です。大嫌いな秋を告げる存在なのですが、ムチャクチャ存在感のある虫なんです。
■ゲンゴロウ(コウチュウ目オサムシ上科)
「ゲンゴロウ」なんて勇ましい名前を持っている割には、モガモガと鈍くさい泳ぎ方ですぐに捕まえられます。形状も丸っこくて、キレがない。のんびりしてどこか愛嬌のある感じが好きでした。ゲンゴロウは、飼うのも簡単で、見ていても飽きません。たとえばタガメなど水生昆虫は小魚やザリガニを捕食する肉食性で獰猛(どうもう)なのですが、ゲンゴロウが狙うのは、弱った小魚や昆虫です。今は田んぼがどんどんと姿を消し、環境破壊の影響もあり、数は激減しています。でも、そのハニーさ、愛くるしさが魅力的な昆虫です。