■ツノゼミ(カメムシ目ツノゼミ科)
五つ目は、これしかないと思いました。「昆虫とは何か」という問いに対する答えを、これほど具現化する虫はいません。
直径1センチ程度のちっちゃい体躯にもかかわらず、背中の「ツノ」にあたる部分が三日月のように変形していたり、ブドウの房のような形状だったり。その「ヘルメット」と呼ばれるツノ部分が多種多様な形状を持つ、とても奇妙な昆虫として有名です。その「ヘルメット」部分は何かといえば、胸が進化したものだという説もあります。セミのような形状もあるし、似ても似つかない種類もあります。人間の目線だと、小さい体躯でそんなに変化をつけなくてもいいのに、と思うのだろうけれど、必要があって、進化しているわけでしょう。
昆虫は、はるか昔から地球上に存在していたわけで、人間は新参者ですよね。ツノゼミの不思議な形状は、昆虫の謎に迫る入り口のひとつでもありますし、太古から続く昆虫の歴史を思い起こさせてくれます。
昆虫の展覧会は、昆虫とは何かという問いかけを私たちに投げかけてくれるわけです。特別展「昆虫」では、「気持ち悪い」でも、「かっこいい」でもいい。人間の想像を超えて進化し、変化してきた昆虫のすごさを感じてください。
また、私が考案した昆活マイスター展示もぜひお楽しみください。
(構成/本誌・永井貴子)
※週刊朝日 2018年7月27日号