「次シーズンからの新ルールにより、ジャンプの基礎点が減り、演技全体のバランスが重視されるようになります。そのような点も、もう一度チャレンジしたいという思いや自信につながったのでは」
引退後はキャスターとしても活躍したが、その経験も影響したと考える。
「他の選手の活躍を外側から見ることで、やっぱり自分はスケーターなんだ、そこで浴びるスポットライトや受ける評価こそが、一番自分らしいことだと思ったのではないでしょうか」
田中ウルヴェ京さん(メンタルトレーニング上級指導士/IOCマーケティング委員/ソウル五輪シンクロナイズド・スイミング・デュエット銅メダリスト)は、会見後の高橋と、次のような短い会話を交わした。
「復帰は、別にメダルとか全然関係ないでしょ?」
「はい! スケートがやりたかったんです」
気持ちを表すには、このシンプルな言葉しかなかったという。
「新しい自分を作るというよりは、過去の自分を見直すことによって自己の再構築をする。その挑戦にワクワクしているように見受けられました」(田中さん)
現役復帰は勘を取り戻すのも並大抵のことではない。
「しかし、技術以上の表現力で、これまでの固定観念を超えた、『いったん違う世界を見た高橋選手ならではのもの』を見せてくれるような気がします」(同)
誰も見たことのない、新たなステップに期待したい。(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2018年7月20日号