「民事信託は親族間で財産管理を受託できる信託契約です。身内で契約できるので、『家族信託』とも呼ばれます。親の財産を信託された子は、親の代わりに財産を運用したり、使ったりすることができます。認知症で意思能力が低下しても、財産を信託しておけば、相続対策も滞りなくできるようになります」(「夢相続」の曽根代表)

 民事信託は信託法が改正された07年からできるようになった。営利目的ではなく、信託銀行などが行う「商事信託」とは区別されている。

 実際に民事信託を活用している40代の女性はこう話す。

「親の資産を管理することで、介護にかかる費用を将来にわたって確保できます。信託契約を結ぶため親とじっくり話し合えたことで、信頼関係も強くなりました」

 民事信託には子どもから孫らへと資産の継承順位を指定できるメリットもある。遺言では資産の直接の受取人しか指定できず、次の世代までの相続の仕方を指定することはできない。

 先祖代々の土地をずっと引き継いでいってもらいたい場合、土地の資産管理を親から子どもに移し、子どもが死んだら孫に移すよう指定しておけばいい。

 民事信託は契約書類の作成などが複雑なので、司法書士や税理士ら専門家に相談しよう。

 残念ながら認知症が進んでしまったら、本人に代わって財産の処分や契約などができる「成年後見制度」もある。身近に頼れる家族がいなくても、第三者を後見人にすることができる。家庭裁判所が監督するので、資産を使い込まれる心配は少ない。資産管理だけでなく、生活支援や介護の手配など「身上監護」もしてもらえる。

 民事信託を活用しつつ、将来は成年後見制度を併用することもできる。まずは信頼できる家族と話し合ってみよう。

(3)×土地は絶対手放すな
→不要な土地は相続放棄 借金あれば限定承認も選択肢

<ここがポイント>
●相続すると処分できないまま“負動産”になることも
●限定承認なら資産のプラスの範囲内で引き継げる
●自分で家庭裁判所に申請すれば費用を抑えられる

 不動産は価値を持ち続けるという「土地神話」があった。活用する予定がなくても土地は絶対手放さない。不便な場所でも土地を相続できるなら、喜んでもらうのが当たり前だった。

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