神話はすでに崩壊している。野村総合研究所によると、総住宅数に占める空き家率は13年は13.5%。このままだと33年には30.4%まで上昇し、「3軒に1軒が空き家」になると予測する。

 都市部では一部の土地は値上がりしているが、地方では値下がりが目立つ。売ろうとしても売れず、自治体に寄付しようとしても拒否され、維持費だけがかかる「負動産」はあちこちにある。

 土地はいったん相続すると処分することは難しい。日本には土地を放棄できる制度が十分整備されていないためだ。負動産を持ち続けるリスクを避けるには、相続しないことも考えよう。

 資産が利用しにくい土地だけの場合や、資産に比べ負債が確実に大きい場合は、プラスの財産もマイナスの財産も全部引き継がない「相続放棄」が便利だ。被相続人が亡くなってから3カ月以内に家庭裁判所に届け出る。自分で戸籍謄本などを用意し申請すれば、数千円の費用でできる。誰も引き取らない土地は国のものになる。

 相続の仕方にはプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」もある。相続する財産の一覧を作成し、相続人全員の合意を取り付ける必要がある。清算や税金を払う手続きも面倒なので、実際に限定承認を選ぶ人は少数派だが、検討する価値はある。

 弁護士の作花知志氏は「負債を賄えるだけの資産価値があるかどうかわからない不動産がある場合などに、使われることがあります」と話す。

 限定承認しておけば、資産よりも負債が大きいと後からわかっても、負債だけを引き継ぐことはない。土地などの資産はあるが、借金もかなり見込まれる場合は、利用を検討してみよう。家宝などどうしても相続したい財産があれば、適正な評価額で買うこともできる。

 限定承認を選ぶなら、弁護士ら専門家に相談しよう。資産より負債が大きい債務超過がはっきりしている場合は、相続放棄したほうが手っ取り早いことも多い。

 普段から親の資産や負債の状況を把握しておけば、亡くなってから慌てずにすむ。土地は売ればいくらになるのかなどを、早めに調べておこう。子どもが負動産を抱え込んで苦労しないよう、親の理解も必要だ。(本誌相続取材班)

週刊朝日 2018年6月29日号より抜粋

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