「あたしのせい」はスカ調のアレンジ。床に落ちていた“4番目”のピアスに“諦めてしまった”恋を思い起こし、後悔する主人公を描いた曲。シングルでも発売された「予告」とともに、ライヴでは大いに盛り上がりそうだ。

 多彩でドラマチックな「夜空綺麗」では、情感豊かな歌を聴かせる。一方、「宇宙で息をして」は、正統的なポップ・アレンジ。“すっと背筋が伸びるような素直なメロディを持ったせつない曲が作りたくって”と、aiko自身が語る。

 アルバムを締めくくる「だから」は、“二人も一人も同じなんだと 思える日もあれば 孤独な日もあって”と、これまでの歩みを振り返り、これからを歌っている。

 前々作の『泡のような愛だった』(14年)では、感情をストレートに表現し、思いをさらけ出した長い歌詞が話題となった。本作では言葉を吟味し、正統的なラヴ・ソング、軽快なポップ・ソングに加え、情景描写による深みのある歌詞、シリアスな側面もうかがわせる。前作『May Dream』以来のピアノ、オルガンを加味したギター・ロックだけでなく、ソウル/ジャズ的な音楽展開も見逃せない。

 聴く者の胸をざわつかせる歌詞、歌いぶりに加え、大人のヴォーカリストとしての新たな魅力も注目されよう。素敵なアルバムを生んだ。(音楽評論家・小倉エージ)

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