「幸せ寿命」を延ばそう(※写真はイメージ)
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一人暮しの高齢者が楽しみにしていること(週刊朝日 2018年6月1日号より)
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生活の満足度や生きがいに関する高齢者の意識(週刊朝日 2018年6月1日号より)
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100年人生をたおやかに、「幸せ寿命」を延ばす10のポイント(週刊朝日 2018年6月1日号より)
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 人生100年時代を迎え、元気に動ける健康寿命、お金に困らない資産寿命を延ばすことが叫ばれている。ただ、体が元気でお金があっても、幸福でなければ、さびしい。そこで、幸福を感じていられる期間「幸せ寿命」を延ばすにはどうしたらいいのか。

【図表でみる】一人暮しの高齢者が楽しみにしていることは?

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 東京都内の70代の無職男性は今年春、うつ症状に苦しんだ。町内会活動の進め方を巡り、近所の人と言い争ったのがきっかけだ。

 家にこもってぼんやりと窓の外を眺める日が増え、妻に「生きていても仕方ない」と口にすることも。食欲が落ち、日課だった散歩にも行けない。処方された薬を飲み続け、最近ようやく体調を取り戻してきた。

 定年後は、在職時とは違う悩みが増える。限られた人間関係、長年連れ添った伴侶との死別、蓄えが減るお金の心配、病気介護の不安……。

 内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」によると、生きがい(喜びや楽しみ)を感じている60歳以上の高齢者は約7割で、約3割は「あまり感じていない」「まったく感じていない」と答えた。

 元気に自立して暮らせる健康寿命は、男性約72歳、女性約75歳。平均寿命は男性約81歳、女性約87歳のため、その差は、男性9年間、女性12年間もある。

 抗がん剤の副作用に耐える患者、認知症患者の苦しみと支える家族の介護負担、人工臓器による終わりの見えない延命治療……。そんな健康寿命と平均寿命の差がもたらす生々しい現実に向き合ってきたのが、慶応義塾大医学部の伊藤裕教授(内科学)だ。一方で、苦しい境遇にありながらも、はつらつと幸せに生きる人にも数多く接してきた。

 伊藤教授は近著『幸福寿命』(朝日新書)で、こう伝えている。

〈突き詰めてみると、私たちの究極の願いは、「死ぬまでずっと幸せでいたい」ではないでしょうか? 私はこの「幸せを感じていられる期間」を「幸福寿命」と定義したいと思います。「幸福寿命」をできる限り延ばすことこそが万人の偽りない願いだと思います〉

 ではどう延ばせるのか。伊藤教授は、幸せは人と人とのつながりなど「あいだ」にあるとして、こう話す。

「厳しい社会のなかでも、我慢ではなくシェア、自助ではなく共助というように、まわりの人と接するなかで幸せのヒントが見つかります。独りでは幸せになれず、だれかとのやりとりで幸せを感じられる。それに早く気づいた人のほうが、幸福寿命を延ばせるのです」

 幸せを感じる瞬間は、身近な生活にあふれているはずだ。家族とともに過ごしたり、友人の喜ぶ姿を見たり。自分と他人とのあいだにこそ、幸福は存在する。

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