幸せ寿命を延ばすための大事なキーワードがもう一つある。脳内で情報をやりとりする役目を果たす神経伝達物質、セロトニンだ。

 東邦大医学部名誉教授で、「セロトニンDojo」(東京都)の有田秀穂代表はこう指摘する。

「体内では様々なホルモンや調節物質が分泌されていますが、心のバランスを保つ脳内物質がセロトニンです。不足すると精神が不安定になり、睡眠にも悪い影響を与えます。うつ病などの精神疾患の原因の一つとも言われています。セロトニンを増やす生活習慣が大切です」

 有田代表は「道場」で、うつや不眠症に苦しむ人向けにメンタルケアやトレーニングを提供している。薬に頼らず、セロトニンを増やすことで心身の健康を取り戻すねらいだ。では、どう増やせるのか。道場を訪ねて、有田代表に聞いた。

 まず大事なのは、朝起きたら日光を浴びることだという。ベランダや庭があれば外に出る。難しければ、窓やカーテンを開けて陽光が差し込むようにする。

「太陽の光を浴びると目の網膜が刺激され、セロトニン神経にスイッチが入り、分泌されます。起きている間は一定量が放出され続け、脳はすっきりと覚醒し続けます」(有田代表)

 すっきり脳でいるためには、リズミカルな運動をすることもいい。例えば、5分以上30分以内のウォーキング。30分を超えて長時間やりすぎると、疲労や苦痛を起こすこともあるので逆効果という。また、同じ歩く行為でも、犬の散歩や通勤などの移動行動はセロトニンを増やす面からは効果的でない、と教えてくれた。

「意識を集中させて歩くことが大事なので、目や耳からいろいろな刺激が入ってくる状況で歩くのはよくありません。脳をかき乱す刺激を与えると、セロトニンは増えないのです」

 通勤途中や家の中でもできるリズム運動がある。ガムやスルメを口にして、リズムよく噛むこと。咀嚼のリズム運動がセロトニン神経を活性化させるという。

 食事の際も、リズムよく噛むようにしよう。セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから作られる。大豆製品や乳製品、鶏卵、魚卵、ゴマ、ナッツ、アボカド、バナナなどに多く含まれる成分。サプリメントに頼らずとも、日常の食生活でバランスよく食べるようにすればよい。

 呼吸を整えるのも、有効な方法。実力を最大限発揮するため、スポーツ選手が競技前に呼吸を整える姿を見かける。吐く息に意識を集中する呼吸法は緊張をほぐすとともに、セロトニンを増やす効果を見込める。

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