例えば墨田区立花1~4丁目、江東区亀戸4~9丁目、江戸川区平井1~7丁目などでは7メートル程度。2階建て住宅はほぼ水没するため、家に残っていると生命の危険が高まる。
国は過去に、東京湾を高潮が襲い誰も避難しないと最大7600人が死亡するという推計を出している。都は今回、人的被害を推計していないが、国と同じく数千人規模の死者が考えられる。
災害対策の司令塔となるはずの区役所付近も浸水する。江東区役所は約6メートル、江戸川区役所は約5メートル、葛飾区役所は約4メートルといった想定だ。区役所が使えない場合は、災害対策本部を移すことも検討している。
企業や飲食店、ホテルなどが集中する都心も安全ではない。新橋駅や品川駅付近では深いところで1メートル以上浸水する。地下街に水が流れ込めばビルの機能は停止し、人的被害の危険性が高まる。地下鉄の路線などを通じて水が広がり、予想外の被害もあり得る。
海から離れた地域でも警戒が必要だ。多摩川、荒川、神田川、目黒川の上流部などだ。板橋区、北区、新宿区、目黒区でも浸水が想定されている。
「高潮で河口の水位が上がれば、上流部でも水位が上がる。河口から遠くても川の近くなどでは浸水の恐れがあることを知ってほしい」(東京都港湾整備部の担当者)
堤防が決壊した場所の近くでは家屋が流出する危険性もある。地震への警戒を呼びかけていた防災コンサルタントで1級建築士の三舩康道さんは、高潮にも警鐘を鳴らす。
「堤防が崩れると短時間で一気に水が押し寄せ、津波のようになることがある。基礎となる杭を地面に深く打ち込んでいない木造住宅などは流されてしまう」
流されなくても一度でも浸水すれば、汚泥などがたまる。水道や電気といった「ライフライン」が止まるため、長期間住めない。電気製品や家具なども大半が壊れてしまう。
今回のシミュレーションでは、堤防の決壊によって浸水が長引く地域もある。墨田区や江戸川区、江東区や葛飾区などでは、堤防が修復されるまで1週間以上水浸しになるところが出てくる。