田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
今なお収束しない「森友・加計問題」(※写真はイメージ)今なお収束しない「森友・加計問題」(※写真はイメージ)
 今なお収束しない「森友・加計問題」。ジャーナリストの田原総一朗氏がこの問題について安倍首相を批判する。

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 森友・加計問題は、安倍政権の一強多弱の時代が長く続いたことで、神経がゆるんでしまったために起きたのだろうと捉えている。とくに加計学園の獣医学部問題は、そのことがはっきりしている。

 獣医学部新設の認定についての諮問会議を始めるにあたり、安倍首相が「加計孝太郎氏とは40年来の友人である。だからといって認定を甘くするな。厳しくやってほしい」と言っていれば何の問題もなかった。特別に加計氏から賄賂を受け取っているわけでもなく、それに厳しくやってほしいと言ったって、どうせ忖度するのだから……。「何も知らない。2017年1月20日に決着するまでまったく知らなかった」なんて言うから大問題になっているのである。面倒くさいから、知らないことにしよう、と考えたのだろう。

 安倍首相がそう言っているために、柳瀬唯夫元首相秘書官は国会で「記憶にありません」などという答え方しかできないでいるのである。

 今年4月になって、愛媛県や今治市の職員、そして加計学園の幹部たちが、15年4月2日に首相官邸に行った際、柳瀬氏が面会して、加計学園の獣医学部について「首相案件」だと語ったという事実が愛媛県の文書に書かれていることが判明した。この文書は農林水産省にもあり、何と内閣府が、柳瀬氏が面会する予定を語っていたことが、文部科学省の記録で確かめられている。

 国民のほとんどは柳瀬氏がウソを言っていると判断せざるを得ないであろう。私は、柳瀬氏が経済産業省の課長時代からよく知っている。真面目で優秀な人間であった。その柳瀬氏をこのような立場に追い込んでいるのは安倍首相である。

 また、森友学園問題にしても、3月2日に朝日新聞が、財務省が国有地売却についての決裁文書を改ざんしている、と報道しなければ、うやむやの中で、過去の事件として終わるはずであった。朝日新聞の報道が、大きく火をつけたのである。

 
 このような決裁文書の改ざんがあって、しかもそれを隠蔽していた。つまり、国民を騙すつもりだったというのは、民主主義を標榜する国家にはあってはならないことである。

 そのことを財務省自体が認めざるを得なくなった。私はこの時点で、麻生財務相は当然辞するもの、と考えていた。何人かの自民党幹部にも確かめたのだが、誰もがそのように捉えていた。

 私は、麻生財務相が辞めて、そのうえで安倍首相は第三者機関を構築し、なぜ改ざんしたのかを佐川宣寿前理財局長などに徹底的に問いただして、事実を解明するのだろうと予想していたのだが、安倍首相には、まったくその気持ちがないようだ。

 私は、3週間ほど前に自民党の参議院議員たちの勉強会に呼ばれた。北朝鮮、米国、韓国、そして中国などの思惑について語ってほしい、というのである。70人以上が出席していて、前半はその話をしたのだが、後半は自民党批判を展開した。

「あなたたちは自民党の議員で、自民党を愛していて、自民党という党に責任を持っているはずだ。とすれば、自民党に対する国民の信頼を取り戻すために、きちんと安倍首相批判をすべきであり、誰もが安倍首相のイエスマンでしかないのは、自民党の劣化ではないのか」。反論の類はまったく出なかった。少なからぬ議員たちが、「田原さんの言うとおりです」と苦笑いをして言ったのだが……。

週刊朝日 2018年5月18日号