夫:あのころは、携帯電話はメールで悪口を言い合ったり、ゲームをしたりと不健全な使い方をしているように見えた。子どもがそんなもの持つ必要ないと。
妻:息子の場合、中学3年のとき、学年で携帯電話を持ってない生徒は2人だけで、その片方でした。高校に進学すると一学年18クラスもあって、クラブの連絡などがメールで一斉に来るので、学校から「必需品ですから」って言われましたよ。
夫:家にはゲーム機もなかったな。
妻:小学生のとき、お友達が家に遊びに来て、「えー、工藤んちゲームないの?」と言うから、私が「これでもやりなさい!」って人生ゲームを真ん中にドーンと置いた。そしたら結構、盛り上がってましたよ。
夫:僕が店を開いたときは「インベーダーゲーム」がはやっていたんです。僕もいっときはやったんだけど、ふと、うまくなるには、結局パターンと対策の問題だと気がついた。ゲームの設計図があるんだから、人の手の中で遊んでいるようなものだと。お釈迦さまの手のひらの孫悟空みたいなものでしょ。まあ、商売柄、活字の本を読めよっていう思いもありますが。
妻;子どもたちには「勉強しろ」とは言わなかった。むしろ、勉強はするなと言うほうでした。息子にも「日曜まで塾に行くな」って。
夫:夏休みに塾の休みが3日間だけあって、淡路島に遊びに行こうとしたら、午前中は宿題をやるという。「そんなのやめとけ」って僕は言いましたが。
妻:だったら、あなたが教えてくださいって。
夫:息子は算数の問題を公式に当てはめて解こうとするから「ちょっと待て、理屈がわかっているのか」と。台形の面積を求める公式がなぜこうなるのか、いちいち説明するので、勉強の邪魔になってました。
妻:息子からしたら、塾を休んだり、宿題をしなかったりするのは、不安なんですね。みんなに遅れてしまうから。
夫:そもそも、受験のための勉強って何の役に立つのだろうという思いがある。僕は団塊の世代。大学受験は競争が激しくて、進学した立命館大学の入試の倍率は39倍だった。第1志望は国立大。数学は得意で100点をとるつもりでいたんですが、問題数が多く、7割しか解けなかった。設問を見た瞬間にパッと反射するように解く訓練をしてこなかったから。落ちたときはショックでね。考えればわかるけど、考えてたら受からない。受験戦争なんて子どもに味わわせなくていいと思いました。