「鉄人」と呼ばれた衣笠祥雄さん(c)朝日新聞社
「鉄人」と呼ばれた衣笠祥雄さん(c)朝日新聞社
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「鉄人」の愛称で親しまれた元プロ野球選手の衣笠祥雄(きぬがさ・さちお)さんが亡くなった。死因は大腸がんだった。大腸がんは適切な治療を受ければ比較的治る病気ともいわれている。大腸の診断では、従来の大腸内視鏡検査の進化に加え、患者にやさしく、精度の高い機器による検査の選択肢が増えている。週刊朝日ムック『大腸がんと診断されました』から、ここではカプセル内視鏡、大腸3D-CTの二つを紹介する。

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■カプセル内視鏡

 大腸内視鏡検査を敬遠する人は多い。日本では3割程度の受診率だ。特に女性は、大腸がんの死亡数が1位だが、痛そう、恥ずかしいなどの理由で拒否する人がいる。そういう人や、おなかの手術歴があるなどの理由で、腸が癒着して内視鏡がうまく通らない人に向いているのがカプセル内視鏡だ。長さ31ミリ、直径11ミリほどのカメラが仕込まれたカプセルだ。

「もともと、内視鏡を到達させるのが難しい小腸の検査から始まりましたが、現在、大腸の検査にも保険が使えます」

 そう話すのは、東京慈恵会医科大学病院総合健診・予防医学センター長の加藤智弘医師だ。

 カプセル内視鏡で検査をするには、通常の内視鏡検査と同様に下剤で腸の中をきれいにする。その後、おなか表面に心電図のようなセンサーを貼る。それをハードディスクにつなぎ、カプセル内視鏡を飲む。大腸に到達したカプセルは転がりながら2方向から腸内を撮影し、画像をハードディスクに随時転送する。検査は10時間ほどで終了し、カプセルは肛門から排泄される。痛みもない。

 現在カプセル内視鏡は第2世代に改良され、視野が両側で344度と広くなり、カプセル通過の速さに応じて毎秒4枚から35枚までの撮影が可能だ。

「大腸内視鏡検査とほぼ同等の精度です。ただし現状の保険適用は大腸内視鏡検査であり、こちらがベストの検査です。カプセル内視鏡は内視鏡が完遂できない方や、できないと予想される方に保険適用が限られるオプションの検査です。しかし将来は適応が広がることが期待されます」(加藤医師)

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