作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は、「復讐」について。
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先月公開されたNetflixオリジナルドキュメンタリー「トランプ:アメリカン・ドリーム」は、大統領になるまでのトランプの軌跡を1970年代から、膨大な資料と知人たちの証言によって克明に描いている。映像の力はやはり圧倒的で、若きトランプがインタビューに答え、「(お金がなくなったら)大統領になろうかな」とニタッとする姿など、かなりぞくぞくするものがある。
衝撃だったのは80年代のトランプタワーの建築現場だ。現場の広大な壁一面に、ビキニ姿の女性が描かれていた。雨が降ればビキニが剥がれるという仕掛けで、壁には通行人のためののぞき穴が開けられた。映像では男性通行人が穴から中をのぞく様子が楽しげな調子で紹介されていた。
メディアを駆使し、欲望を煽り、羞恥心や知性などに邪魔されずキンピカ欲望を剥き出しにするトランプは80年代からずっと、アメリカの「ポップカルチャー」の有名人、「金持ち」の代表だった。次々にモデルとつきあい、「彼のセックスは最高!」などと自分の彼女に言わせ、不倫ネタで芸能誌を賑わせ続けるなど、人々のゲスな好奇心を満たし続けたトランプの人気とパワーは、とても自然に政治と近づいていく。